チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年12月23日

焼身抗議者21人の遺書、最後の言葉:その1

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以下、これまでに発見、発表された焼身者の遺言、遺書、録音されたメッセージ、その他今回は友人や近親者に話した最後の言葉等を含め紹介する。原文等、より詳しい情報は付記URLへ。

1)2009年2月27日にンガバで焼身した僧タペー(1番)が残した言葉。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51719665.html

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中国当局が今日行われる大事な祈祷会を妨害するなら、私は死をもって抗議するであろう。

2)2011年3月16日にンガバで焼身、死亡したプンツォ(2番)が焼身前に仲間の僧侶に話した言葉。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2011-03.html#20110318

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耐え難い苦しみを心に感じる。3月16日にはこの世に何かの軌跡を残すつもりだ。

3)2011年12月2日に焼身・死亡したテンジン・プンツォ(15番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51718826.html

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(1) チベットをチベットたらしめている仏教の教えを、その正しい見解とともに保持するカルマ僧院の見者(僧院長)ロトゥ・ラプセル師とナムセ・ソナム師、及び全ての僧侶、尼僧が拘束され、むち打たれている今。カルマ僧 院の子弟に関係する私は苦しみの内に死を選ぶ。チベット人としての誇りを持ち続ける愚生テンジン・プンツォ記す。
兄弟たちよ、心挫けるなかれ、勇気を失うなかれ。

(2) 自他交換の法友たちよ。仏法を保持する見者2人と僧侶、尼僧たちのことを思ってほしい。宗教を否定する独裁政権をどうして信頼できよう。テンジン・プンツォ記す。

(3) カルマ僧院の法友たちよ.戒定慧を備えた見者と僧侶、尼僧のことを思うと生きる意味を失う。みんな立ち上がろう!世の人々は世間の八法に侵され、敵を怖れ逃げ惑う哀れな動物の如し。取るに足らぬ今生にも縁起の法はある。導師ブッダシャカムニに祈りを捧げる。苦しみに凌駕される愚生テンジン・プンツォが記す。

(4) チベット全土と今年のカルマ僧院の受難を思うとき、私はこの世に留まることができない。

5)2012年1月8日に焼身・死亡したトゥルク・ソナム・ワンギェル(ソバ・リンポチェ)(18番)の録音遺言。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51729748.html

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 内外の全てのチベット人同胞600万人へ。チベット人の幸福と、内外に引き裂かれた600万のチベット人が再び相まみえるために、その身を犠牲にした勇者トゥプテン・ンゴドゥップ氏を初めとする内外の勇者・勇女全てに感謝の意を表明する。私はすでに40歳を越えたが、これまで彼らのような勇気を奮い立たせることもなく過ごして来た。もっぱらチベットの伝統的文化と宗教を周りの人々にできるだけ伝える事に努力し続けて来た。

 21世紀に入った現在、今年(チベット暦ではまだ2011年)は命を捧げた勇者・勇女が沢山いた年だった。そこで私は彼らの血肉を象徴するために、己の誉れのためではなく、心から三戒(別解脱戒、菩薩戒、密教戒)と特に密教戒の主戒である己の身と命を投げ打ち(これまでの全ての有情の悪業の)許しを請うのである。全ての有情は父、母でなかったものはいない。計り知れぬ有情が野蛮人のように法に反する力に屈し、不善なる大きな業を為しつつある。心から彼ら(中国)の悪業を浄化したい。また、ノミやシラミに至まで、呼吸する全ての、この天空に満ちる有情全てが、死の苦しみを逃れ阿弥陀如来の下に生まれ、全智至上の完全な仏の位を得るために、己の命を供養物として捧げる次第である。

 そして、至上の人の姿をした仏神であるダライ・ラマ法王を始めとするラマやトゥルク全てが永遠の命を保たれるよう、私の身と命をマンダラと化し捧げる。

<大地に香水を撒き散華し、須弥山、四大陸、太陽と月により荘厳し、これを仏の浄土と見なし捧げ奉るが故に、全ての有情が清浄なる浄土を享受できますように。自他の身口意と三世の功徳の集積と、宝の如しマンダラを普賢菩薩供養と共に、心に生起しラマと三宝に捧げ奉る。慈悲の心でお受け取りになり我に加持を与えたまえ。オーム・イダムグル・ラトナマンダラカム・ニルヤタヤミ>

 この行為は自分1人のためになすのではなく、名誉のためになすのでもない、清浄なる思いにより、今生最大の勇気を持って、(ブッダのように、子トラたちを救うために飢えた)雌トラに身を捧げるようになすのだ。私のようにチベットの勇者・勇女たちもこのような思いで命を投げ出したに違いない。しかし彼らは実行の際、怒りの感情と共に死んだ者もいるかもしれない。そうであれば彼らが解放の道を辿れるかどうかは怪しい。故に、様々な悟りへの道を思い出させてくれる船頭のような導師と、このような供養を捧げる善行の力に依って、将来、彼らを含めた全ての有情が全智至上の仏の位に到ることを祈願しながら行うのだ。また、内外のラマ、トゥルク全ての長寿と就中ダライ・ラマ法王をポタラの玉座にお迎えして、チベットの政教を司ることができますようにと祈願する。

 <雪山に囲まれしこの聖域の、全ての福利の源である、観音菩薩であられるテンジン・ギャンツォよ、濁世が終わるまで存命されますように。その加持の力が天空の如く行き渡らんことを。
間違った思いにより祖国に対し、危害を及ぼす黒い形を持つもの、持たないもの、思いと行動が邪悪な侵入者が、三宝の真理の力により根こそぎにされますように>

[かくの如し善なる…の二偈と、祈願の王と呼ばれる…等の一偈と、これと三世…等の一偈。タドヤタ、パンチャタライヤ(三宝)に三度礼拝する]

 ここで、金剛同士たち、各地におられる信者たちに願う。みんな一致団結し手を取り合い、チベット人たちが将来輝きに満ちた一つの国家を取り戻すために奮闘せよ。これが命を捧げた勇者・勇女たちの願いだ。故に、土地や水等のことで争ったりせず、思いを一つにすべきだ。若者たちはチベットの文化を尊重し学び、年輩の者たちは自らの身口意を善なるものとし、チベット人の慣習と気質、言語等が衰退しないようにチベット人としてのアイデンティティーを保持し続けねばならない。同時に、チベット人の幸福と、全ての有情が解放と全智の位を得るために清浄なる仏法を行ずることが重要である。タシデレ(吉祥なる幸運を)。

 そして、家族、同郷の人たち、友人たち、特に**[1人の名前を言うが聞き取れず]等みんなに伝えておく。私には隠してある財産など何もない。あるものはすべて以前より三宝に捧げ切っている。死後、大金が見つかったとか、ああだった、こうだったとか財産のことで噂する必要はない。兄弟姉妹、親戚、友人、各地の檀家たちもこのことを心得ておいてほしい。

 他、私が担保した財産や物品等は檀家たちが、地域の人たちやラマ、トゥルクたちによろしく分け与えてほしい。

 それでは、自他の三世に渡り積んだ功徳の全てを母なる全ての有情、特に地獄等で苦しみを味わいつつあるものたちが解放を得られますようにと、以下の如く祈願する。
[祈願の王…など一偈。今生と三世の…など一偈を唱える]

 最後に、内外の法友男女すべてに言いたい。悲しまないでほしい。ラマである善友に対し一心に祈るのだ。菩提を得るまで一瞬たりと離れることはない。老人たち、全ての人々よ、楽な時も苦しい時も、良い時も悪い時も、喜しい時も悲しい時も、如何なる時にも三宝以外に望みを託す対象はない。これを忘れないように。タシデレ。

5)2012年2月19日にンガバ州ザムタン県で焼身したナンドル18歳(25番)の遺書。

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ナンドルの遺書

不屈の愛国心と勇気と共に、額を高く上げ
私、ナンドルは、恩深き両親、兄弟、親戚を思う
恩あるチベットの人々の大義のために、炎に我が命を投げ入れることで
願わくば、チベットの男たち女たちよ、団結と調和を守らんことを

チベット人ならば、チベットの服を着よ
そして、チベット語を話せ
チベット人であることを決して忘れるな
チベット人であるならば、愛と慈悲を持て
両親を敬い、チベット人同士で団結し、調和を保て
動物に対し慈悲深くあれ
有情の命を奪うことを慎め

ダライ・ラマ法王が何万年も生きられますように

チベットのラマやトゥルクが何万年も生きられますように

チベットの人々が中国の邪悪な支配から解放されますように
中国の邪悪な支配の下には大きな苦しみがあるのみ

この苦しみは大きく堪え難い
邪悪な中国がチベットを侵略した
この邪悪な支配の下で暮らすことは不可能だ
邪悪な中国は愛と慈悲を持たない
堪え難き暴力と苦しみを与えるのみ
そして、最後にはチベットを抹殺しようとしている

ダライ・ラマ法王が何万年も生きられますように

7)2012年3月3日にマチュで焼身、死亡した19歳の中学生ツェリン・キ(26番)は焼身の前に家族の1人と焼身について話をした。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51738076.html

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どうして彼らが焼身するのかが理解できる、誰もこのような状態で生きたくはないだろう。

7)2012年3月26日、にニューデリーで焼身・死亡したジャンペル・イシェ(34番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51737131.html

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(1)世界の平和の導師、ダライ・ラマ法王が千年万年の長寿を全うされますように。(法王を)チベット本土にお迎えすべきだ。骨肉と顔を同じくする同胞たちが集い、ポタラ宮殿の前でチベットの国歌を雷鳴の如く歌うことを願う。その日が必ず来ることを確信する。

(2)同胞たちよ、将来の幸と繁栄を望むなら忠愛が必要だ。忠愛は民族の心の命だ。真理を求める勇気だ。将来の幸を導くものだ。同胞たちよ、世界の人々の平和平等を望むなら、忠愛という言葉を大事にすべきだ。義務に励むべきだ。忠愛とは真偽を区別する知恵だ。

(3)自由は全ての有情の幸せと喜びの基だ。自由がなければ、それは風にさらされる灯明の如し。600万チベット人同胞の如し。3地域(ウツァン、カム、アムド)の同胞が一団となれば結果を得ることができよう。勇気を失うな。

(4)私が今、話していることは600万チベット人の生存に関わることだ。民族の生死が掛かる今:財産を持つ者はそれを使う時。(知識等の)徳も持つ者はそれを発揮すべき緊急の時。命のある者はそれを投げ出すべき時と、私は思う。21世紀の今、宝の如し人の身を灯明と化すのは、チベット人600万の苦しみは人権・平等がないことだと世界の人々に知らせるためである。慈悲の心あるなら、慎ましいチベット人たちに注目してほしい。

(5)我々にも先祖代々伝えられて来た仏法を守り、論理の書やチベット語を学ぶ自由が必要だ。世界の人々は平等であるべきだ。世界の人々よ、我々の後ろで立ち上がってほしい。チベットはチベット人のもの。プギェロー!(チベットに勝利を!)

2012年3月16日、タウのジャンペル・イシェが記す。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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