チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年12月23日

焼身抗議者21人の遺書、最後の言葉 :その2

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8)2012年4月19日、ンガバ州ザムタン県で焼身したチュパック・キャプ(39番)とソナム(40番)が連署で残した遺書。

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チュパック・キャプとソナムの最後の願い

チベット人は独自の宗教と文化を持ち、他の民族と区別される。その特徴は、愛と慈悲を持ち、他の人々の幸せのために尽くせという教えにある。しかし、今、チベットの人々は中国の侵略を受け、弾圧されている。基本的人権を奪われ、苦しみの中にある。

そして、チベットが自由を取り戻すため、世界平和のために、私たちは焼身する。自由を奪われたチベット人たちの苦しみは、私たちの焼身の苦しみよりも余程大きい。

恩ある両親よ、家族、兄弟たちよ、私たちはあなた方に愛を感じてないとか、別れたいというのではない。また、自分たちの命を軽んじているのでもない。私たちは2人とも正気で、真っ当な心と思考の下に、チベットが自由を取り戻すために、仏教が栄えること、有情の幸福と、世界平和を願い焼身するのだ。

故にどうか、私たちの最後の願いに従ってほしい。私たちが中国の手に落ちても、何もしないこと。自分たちのために1人のチベット人も傷つかないというのが願いだ。

私たちのことで悲しくなった時には、学のある僧院長やトゥルクたちの助言に従うように。そうすることで、自分たちの正しい文化と伝統を学び、保存することができるであろう。同胞への忠誠心と愛情を守り、自分たちの文化を守り、団結を維持せよ。そうすれば、いつの日にか私たちの望みは叶えられよう。どうか、私たちの最後の心からの願いが叶えられますように。

9)2012年5月30日、ンガバ州ザムタン県バルマ郷で焼身、死亡したリキョ36歳、(43番)の遺書。3ヶ月後に亡命側にやっと伝えられた。彼女は3人の子供を残した。

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世界に平和と幸福がもたらされますように
ダライ・ラマ法王がチベットにお戻りになることができるよう
屠殺や肉を売ることを慎もう
盗みをなさず チベット語を話し 争いを止めよう

生きとし生けるものすべての苦しみを私は引き受ける
私が生きて中国の手に落ちても争わないでほしい
団結し チベットの文化を学んでほしい
火に我が身を焼く
家族よ苦しまないでほしい

10)2012年6月15日にツェンツァで焼身、死亡したタムディン・タル(44番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51749875.html

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ラマ、守護尊、三宝に帰依いたす。
世界に平和が実現されることと、ダライ・ラマ法王がチベットにご帰還されることを願い、チベットの国家が自らの領土を治めるために、私は自らの身を灯明と化し捧げる。

11)2012年6月20日、ザムタンで焼身したテンジン・ケドゥップ(45番)死亡とガワン・ノルペル(46番)入院中?が連署で残した遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51750577.html

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 我々2人は、これまでチベットの宗教や文化に対し少しも貢献できなかった。また経済的にもチベット人を豊かにする仕事ができなかった。だから、今回自分たちができることとして、チベット民族と特にダライ・ラマ法王が千年万年と生きられること、またダライ・ラマ法王がチベットにご帰還されることを願い、我らの身を捧げる。我々のようなチベットの若者にお願いする。チベット人同士で喧嘩しないと誓ってほしい。みんな連帯し一団となりチベット人としての誇りを守ってほしい。また、そうできると確信する。

12)2012年10月4日、チベット自治区ナクチュで焼身、その場で死亡した、ディル出身の作家グドゥップ(58番)が残した5通の遺書。

原文は>http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6710
一通目の日付が3月14日になっている。これは早くも3月に焼身を決心し、これを書き、実際に焼身した10月にネット上に発表したものと思われる。

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命により打ち鳴らされし国家(チベット)の太鼓の音

苦楽と業を共にする雪山の人々(チベット人)の目標は、完全な独立を達成し、ダライ・ラマ法王をチベットにお招きすることである。しかし、ダライ・ラマ法王は非暴力による中道路線を提唱され、名実ともなる自治獲得に努力されている。そして、600万チベット人はこの法王のお言葉を頭上に掲げ、長期にわたり希望を共にして来た。

しかし、中国政府はこの提案に興味を示し賛同するどころか、チベット人の福祉を語るだけでもその者を逮捕し、非常な拷問を与え、ダライ・ラマ法王を非難せず、チベットが中国の一部であると認めない者を暗殺したり、失踪させたりする。チベット人の幸福にはまったく興味を保たず、真の現状を隠し続ける。

我々は非暴力の闘いをさらに研ぎすまし、チベットの真の現状を知らしめ、証拠を示すために、自らの身を火に捧げ、チベット独立を叫ぶ。虚空に有られる神々よチベットを照覧あれ、母なる大地よ悲愛とともにチベットを見守られよ。地上にある世界の全てよ真実に注目されよ。

清らかであった雪の国は赤い血に染まり、非情な軍隊により覆われ、絶え間ない弾圧の下にある。しかし、勇敢にして挫ける事のない雪の子供たちは、智慧の弓を引き、命の矢を放ち、真実の闘いに勝利するであろう。

最後に、雪山の同胞たちよ、平等と自由の権利を享受するために、チベット全体の目的を主とし、個人的な利害を捨て、団結を強めて頂きたい。これが私の願いだ。ディルの人グドゥップより。2012年3月14日。

雪の国チベットの兄弟姉妹よ、過去を振り返れば、喪失、怒り、悲しみ、涙のみで喜びを見いだすことができない。来る水龍の年(来年)には皆さんに健康と成功がもたらされることを重ね重ね祈る。

民族の誇りを保ち、喪失や苦しみに直面しても、決して勇気を失わず、団結を強めて頂きたいと強く願う。ディルのグドゥップより。

世の人々は富と権力、親愛と名声を得ることが幸せの基と思い、このために争い、利己的目的のみを追いかける。これら全てを遠く捨て去り、遥かなる目的のために進むも、何も獲得できず、蒼穹空々、大地漠々、光射さぬ闇と深淵に吹き荒ぶ強風に曝され、我が心の底に燃え続ける希望という炎により我が身は灰と化すか。しかし、火、水、風や荒々しい武器により我が身が粉々になろうとも、後悔せず、悲しみの叫びを決して上げないということが私の誓いである。

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1. 最後の祈り:チベットには完全な独立が必要だ。中国人はチベットから出るべきだ。ダライ・ラマ法王をチベットにお招きすべきだ。内外のチベット人が再会できる時まで、中国政府がいくら弾圧しようとも、我々は抗議を続ける。

2. 民族のために真実を訴える。自由のために我が身を捧げる。

友人に贈る手紙

今日まで、貴殿が示して下さった愛情に支えられ、私が心身ともに健康で過ごせたことに対し、感謝の意を伝えたい。今後、私の行動について、ある者は毒の泡を撒き、またある者は賞賛の太鼓を打つかも知れない。悲しみの涙を流す者もいれば、讃える歌を歌う者もいるかも知れない。何れにせよ、私の目的の是非に関し、心開けた知識人たちが考察することを望む。    友人プンツォク氏へ グドゥプより

13)2012年10月22日、サンチュで焼身、死亡したドゥンドゥップ61歳(62番)が普段からラプラン僧院の僧侶や若いチベット人に対し話ていた言葉。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51766480.html

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焼身はしないように。生きてチベットの将来のために貢献すべきだ。自分たちの世代は1958年と1959年の生き残りだ。だから我々の世代が焼身すればいいのだ。

14)2012年11月8日、レゴン県ロンウォ僧院前のドルマ広場で焼身、死亡したケルサン・ジンバ、18歳(74番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-11.html?p=3#20121108

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民族は平等であるべきだ
チベットには自由が必要だ
チベット語が広く使われるべきだ
ダライ・ラマ法王はチベットにお戻りになるべきだ
私はチベットの自由獲得のために焼身を行う

15)2012年11月12日、レゴン県ドワ郷ドロンウォ遊牧民地帯ケマル草原で焼身、死亡したニンカル・タシ、24歳(76番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-11.html?p=3#20121112

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ダライ・ラマとパンチェン・ラマ、このお二人を頂く、
600万のチベット人には自由が必要だ。チベットには独立が必要だ。
チベット語を学ぶ自由が必要だ。母語を知る自由が必要だ。

パンチェン・ラマは解放されるべきだ。
ギャワ・テンジン・ギャンツォ(ダライ・ラマ)がチベットにお帰りになることが許されるべきだ。

私は自らの身に火を放ち中国政府に抗議する。

父タシ・ナムギェルはじめ家族のみんなよ、
心配したり苦しんだりする必要はない。
善なる仏法に帰依し、福徳の道を歩まれることを。

私の希望は、600万のチベット人がチベット語を学び、母語を知り、
チベットの伝統的衣装を纏い、仲良く、団結することである。

ニンカル・タシより

16)2012年11月15日、レゴン県ツェンモ郷ゴゲ村のお堂の前で焼身、死亡した23歳の女性ティンジン・ドルマ(78番)が焼身の前に父に語った言葉。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51769511.html

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お父さん、チベット人として生きることは大変ね。ダライ・ラマ法王の写真に向かって祈ることもできない。全く自由がないわね。

17)2012年11月17日、ツェコ県ドカルモ郷で焼身、死亡したサンダク・ツェリン、24歳(81番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51769823.html

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赤い頬したチベット人 
雪獅子の末裔
勇気ある雪山の人々よ
チベットへの忠誠心を忘れるでない

18)2012年11月25日、ツェコ県ドカルモ郷で焼身、死亡した17歳の尼僧サンゲ・ドルマ(87番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-11.html#20121128

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お戻りになられた

チベット人たちよ 見上げよ
黄昏の蒼い空を 見上げよ
白い雪山の天上の天幕のような
私のラマがお戻りになられた

チベット人たちよ 見上げよ
雪山の頂を 見上げよ
白い雪獅子がお戻りになった
私の雪獅子がお戻りになった

チベット人たちよ 見上げよ
上方の広大な森林を 見上げよ
美しいトルコ石の色した草原を見よ
私の雌虎がお戻りになった

チベット人たちよ 見上げよ
上方の雪山に囲まれた国を見よ
雪山の国の時代がはじまった
チベットは自由で独立している

ギャワ・テンジン・ギャンツォ(ダライ・ラマ法王)
遠い国にいらっしゃる間は
世界中を巡られて
苦しみの底にある赤い頬したチベット人を
暗闇から救う祈りを続けられる

パンチェン・ラマは獄に繋がれ
獄の中から外をご覧になり
我が雪山の国に
喜びの太陽が昇るを祈られる

雪山の国の苦楽のために

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また、別の便箋に。

雪山の子である愛すべきチベットの男女よ
自分たちが勇敢なチベット人であることを忘れるでない
サンゲ・ドルマより

19)2012年11月27日、ンガバ州ゾゲ県キャンツァ郷で焼身、死亡したケルサン・キャプ、24歳(91番)の遺書。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770946.html

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この世の恩深き父母はじめ兄弟姉妹のみなさん、幸せでありますように
私は雪国チベットに幸せが実現されるために、命を火に投げ出す
ダライ・ラマ法王に長寿を
雪国チベットに幸せの太陽が昇ることが私の願いだ

20)2012年12月3日、ゴロ州ペマで焼身、死亡した僧ロプサン・ゲンドゥン(97番)が焼身の直前に電話で友人に話した言葉。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51771640.html

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最後の言葉をノートしておこうと思った。でも、俺は字が下手だから止めた。その代わりにお前に電話する。俺の願いは3つの地区(ウ・ツァン、カム、アムド)のチベット人が全て一致団結し、仲間同士で争わないということだ。そのようにすることができれば、我々の願いは叶えられるであろう。

21)2012年12月9日、ツェコ県ドカルモ郷で焼身、死亡した17歳の女子中学生ペンチェン・キ(100番)が焼身の前に友人に語った言葉。
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51772349.html

私はチベットのために焼身する。郷の中心に行って役場の前で焼身すれば遺体は当局に奪われ、両親の下に帰れないであろう。だから、私はこの遊牧地で焼身する。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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