チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年12月21日

焼身を計画していたとされる1人と、これを教唆したとされる1人が逮捕されたと

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1912b-300x232政府系新聞《西宁晚报》は18日付けで、青海省黄南チベット族自治州レゴン(同仁)県ロンウォ鎮のホテルで焼身を計画していたチベット人1人と焼身を教唆したチベット人1人を逮捕したと発表した。

逮捕されたのは11月19日で、ホテルからガソリンのポリタンとコットンが発見されたとする。2人の名前は発表されていない。

教唆したとされるチベット人は2005年6月にインドへ亡命し、2011年9月に帰ってきたという。インドにいる間にダライ一味が運営する学校(おそらくソガスクール)に在籍し、亡命側の独立組織であるTYC(チベット青年会議)の活動に関わっていたとされる。

また、彼は焼身を図ろうとする何人かのチベット人に「焼身は英雄的行為」と唆し、焼身者の葬儀に4回出席し、その場でも「焼身者は民族的英雄」と扇動的言動を行ったとされる。

12月9日には新華社がンガバで僧侶と遊牧民を、同じく焼身教唆の罪で逮捕したと報じている。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51772654.html 彼らの場合も亡命側のダライ一味と連絡し合っていたとされる。

今回の場合も逮捕と発表の間に相当な時間差があり、中国政府が主張する「焼身はダライ一味が煽動したものだ」を裏付けるために、作り上げられた供述であろうと普通の人は思うことであろう。仮に内の1人が焼身を本当に行おうとしていたり、もう1人がインドに亡命し学校に通い、TYCのデモとかに参加していたとしても、本当はそれ自体、人に危害を加えるわけではなく、そのような状況に追い込んだ当局の方が責められることはあっても、本人たちに何らかの罪が帰せられるというのはとてもおかしい話なのである。

焼身を図り拘束されたという話は、8月17日にもあった。ドルジェ・ラプテンという57歳の男性がツェンツァのホテルで焼身を準備していたところを当局に察知され、拘束された。彼はその後西寧のホテルで当局により暗殺されたと言われている。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51764871.html

甘粛省甘南チベット族自治州当局は最近焼身に関する公示を発表した。それは、焼身に関係した者を密告すれば千元から20万元の報賞金を与えるというものだ。この場合の焼身に関係した者とは、焼身を計画している者、焼身を煽動・教唆した者、焼身者を匿った者、焼身者の葬儀に参加し祈りを捧げた者、焼身者の遺族に支援金(香典?)を与えた者等が含まれる。これらは全て犯罪行為とされるのだ。

前にも言ったと思うが、世界中どこでも殺人者であろうとその本人が死亡したときには家族が葬儀を行うことが認められている。葬儀自体が犯罪になるという話は聞いたことがない。まして、それに参加したり香典を持って行ったからと言って逮捕されるという国は中国だけじゃないか?もっとも、このような話はチベット以外の中国では聞いたことがないわけだが。

当局は密告と報奨金により、チベット人の団結を破壊しようと思っているのかも知れないが、これも逆効果としか思えない。

焼身の根本原因を考慮することなく、単に弾圧を強化することは、短期的に効果を上げることはあるかもしれないが、長期的には問題を大きくするばかりであることは確かである。

参照:19日付けVOT中国語版http://www.vot.org/?p=20011
20日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32700&article=China+arrests+two+Tibetans+on+self-immolation+charges%2c+Allege+links+with+exile+youth+group

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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