チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年12月15日
焼身と抗議デモに関係した連行が続く
昨日12月14日の夜明け前、アムド、ツェコ県ドカルモ郷メコル村に警官が押し掛け5人を連行した。メコル村は11月23日にドカルモ郷の政府庁舎前で焼身、死亡したタムディン・ドルジェ(29)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770518.htmlの故郷である。連行されたのはタムディン・ドルジェの家の専属僧侶であるゲンドゥン・ジャミヤン(42)、ドコ・キャプ(47)と彼の息子チュペル・ダルギェ(19)、僧侶チュジン(26)、僧侶チュンペル・ロプサン(27)。連行の理由は明らかにされていないが、焼身したタムディン・ドルジェの法要に関わったからとおもわれる。
同じくドカルモ郷で11月25日に焼身、死亡した17歳の尼僧サンゲ・ドルマhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-11.html#20121128の焼身に関わったとして、彼女の姉妹などすでに5人が連行されているが、12月13日にはさらに彼女の義理の兄弟であるトプギェ(26)が連行された。
参照:14日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7071
ザチュカで僧侶6人連行
今月12日、カム、カンゼ州ザチュカ(セルシュ)県ザメ郷ウォンポ僧院(རྫ་ཆུ་ཁ་སེར་ཤུལ་རྫོང་རྫ་སྨད་དབོན་པོ་དགོན་པ་)に朝8時頃、警官が押し掛け6人の僧侶を連行した。6人の名前は僧スゴン、僧スチュ、僧ゲンドゥン、僧ケドゥップ、僧ノルブ、僧イクネン。現地の住民は、彼らの連行は今年10月に地区で僧侶と住民が抗議デモを行ったことに関係しているであろうと話す。
当局はデモの後10月15日から22日に掛け、僧侶、住民合わせて25人を拘束した。彼らの内20人は十分暴力を受けた後、罰金等を払わされ、解放されたが、5人は依然拘束されたままという。
参照:15日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7072
ディルで僧侶を中心に15人連行
こちらは、少し古い話が最近やっと伝わったという件である。今年1月中に自治区ナクチュ地区ディル県にあるギャシュ・ペンカル僧院(འབྲི་རུ་རྒྱ་ཤོད་བན་དཀར་དགོན་པ་)に愛国再教育班が来て、本堂の中からダライ・ラマ法王の写真を引き出し破り捨て、中国国旗を掲げ、ダライ・ラマ批判を強要した。また管理事務所を僧院内に新設することも告げた。これに対し、僧侶たちは全面的に反抗し、ダライ・ラマ批判を拒否した。
当局は僧侶たちを従わせなかったとして僧院長のトゥプテン・ドゥンユ(40)、戒律師のネンダ、財務係りのギャンツォ(55)を逮捕した。
この事件は地域の人々に強い反感を抱かせ、2月8日、世界一斉行動日に合わせ地域の僧侶、一般チベット人数百人が参加し僧院から街までヴィジル行進をおこなった。当局はこの平和的行進を武力弾圧し、ウォンポ僧院の僧侶を中心に12人を拘束した。この内の2人は2008年にもデモを行い2年半の刑期を受けていた。
他、ディル県では子供にテンジンという名を付けることを禁止し、テンジンと名付けられた子供は住民票を作ることが非常に困難となっているという。(「テンジン」という名前は一般的にダライ・ラマ法王の法名テンジン・ギャンツォから取られた名前)
参照:14日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7068
カンゼで医者でもあった尼僧に3年の刑
カム、カンゼでは2010年を中心に多くの抗議デモが発生し、デモに参加した人だけでなく大勢のチベット人が恣意的に拘束され、刑期を受けている。そんな中、2011年6月にカンゼ・ラムダク尼僧院の尼僧チメが拘束され、その後一年半近く行方不明のままであった。
やっと最近になり、関係役人から彼女は秘密裁判により3年の刑を受けたということが家族に知らされた。もっとも、どこに収監されているのか、刑期を受けた理由は何か等は明らかにされないままという。
尼僧チメは医者として地域の人々に大いに貢献していたという。
参照:15日付けTibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/9849-2012-12-15-04-33-29
チベット自治区シガツェ地区当局は最近ある公示を発表した。それによれば、家族の中で誰か1人でもインドに行ったものがいたならば、その家族の土地は全て政府に取り上げられる。また、子供が学校に通っている場合にはその子は学校から退学させられ、住民票を抹消するという。
今回11月に法王が南インドで長期に渡るラムリムの講義を行われたが、これに参加した本土からのチベット人は非常に少なかったという。
この「家族の中でインドに行った者がいる場合」というのはインドに亡命した者はもちろん、単にインドに巡礼に行ったり、法王の法話に参加しただけの人も含まれるようだ。
参照:14日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/restructionintibet-12142012151135.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)