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チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年12月7日
国連への訴え ソガ・スクールの抗議「私の家族を殺すなかれ 私の兄弟姉妹を逮捕するなかれ」
今日、下ダラムサラにあるソガ・スクール(シェラップ・ガツェリン)の生徒たち300人が、3時間程かけて上ダラムサラのツクラカンまでデモ行進し、ツクラカンの勇者の塔の前で集会を開いた。
全員黒い服、黒いマスクを付け、手には白いカタを捧げ、無言で葬式のような行進を行った。集会もほぼ無言のまま声明文が読み上げられるだけの静かで重々しい雰囲気で続けられた。
彼らは内地チベット人に一番近い人たちだ。全員最近チベットから亡命していた若者たちである。この学校は18歳以上で、すでに正規の教育課程に入ることができない若ものたちを対象に、英語やチベット語等を最高5年間教える。
以下、ほぼ全文を訳したその国連事務総長に宛てた手紙の中にもあるが、彼らの中には焼身者を直接知る人も多いのである。それ故、彼らを思い、連帯を示す気持ちも非常に強いものがある。
デモ行進と集会は国連にチベット問題を訴えることを主な目的として行われた。一人一人が手紙に添える連署を行い、バン・キムン氏の写真の前に願いを込めたカタを捧げた。
この後、彼らは夕方まで地面に座り続けたままハンストを続けた。
2008年以前にはこの学校には約800人の生徒がいたが、亡命が難しくなり現在では300人ほどしかいない。
以下、そのバン・キムン氏宛の手紙を訳す(一部省略)。
チベットにおける焼身抗議が増え続ける状況に鑑み、我々シェラップ・ガツェリン(ソガ・スクール)の学生たちは、抑圧的植民地主義者中国がチベットにおいて歴史的にも前例を見ないような規模の悲劇とジェノサイドを引き起こしていることに対し、国連が介入と行動を起こして頂きたいと強く願う。私たち全員は、最近チベットを逃れ現在インドで勉強しているチベット人である。沢山の学生たちが故郷の隣人として焼身した人たちを直接知っている。私たちはあなたと共に憂慮を分かち合いたい。私たちは国連が提唱している普遍的価値である、自由、平等、正義、自治権等が全ての人々に対し平等に認められていると強く信じる。私たちは今、チベットで90人以上の同胞がダライ・ラマ法王のチベット帰還、自由、平等、正義を求め焼身するという、もっとも悲劇的な時期を経験している。他の国の人々が、チベット人が自由のために焼身しているということを正しく評価せず、当たり前のように捕らえていることに対し、非常な悲しみを覚える。中国の増大する経済力が世界をして中国を批判することを遠慮させている。…….
自由のために闘うことは、みんなの闘いだ。しかし、国際社会一般、特に民主的国家の反応はショッキングで、怒りさえ覚える。明らかに、彼らの不正にたいする感覚は麻痺し、良心は鈍っている。チベットは、非民主的で凶暴な中国に対し沈黙するという、複雑な世界の犠牲となっている。今こそ、世界は中国の植民地的経済の陰から脱出し、チベット内で起きている不正と悲劇に対し声を上げるべきだ。チベットは小さな虫が大きな虫に食われるという典型的な例だ。弱者が強者から守られるとき初めて正義が示されたことになる。平等と正義と自由が認められる時、初めて正義が示されたことになる。
私たちは故郷の人々の安否を気遣う。植民地政権はすでに仕返しとして様々な弾圧を強化してきている。恣意的拘禁、逮捕、公的補助金の停止、抗議デモや焼身に関係した人々に対する犯罪者としても調査、部隊の派遣等である。このような普遍的民主主義原理が危険に曝されている時こそ、国連の強く、勇気あるリーダーシップが求められている。チベット人の焼身は人間の良心に訴えるものだ。チベット問題は、全体主義、帝国主義、経済的覇権、軍国主義に対する国際社会の道徳的勇気が試される問題なのである。世界的責任感、道徳的勇気が今こそ必要とされている。私たちは中国政府が焼身者に対し無関心、無慈悲な態度を示し、チベット人の存続を危険に落としめていることに対し、国連が行動することを求める。さらに私たちは、国際機関に対し素早く行動し、チベットへ事実調査団を送ることを求める。真実と正義は嘘と作り事に打ち勝つべきだ。どうか、私たちの自由、正義、平等、そして真実を求める長い苦しい闘いに支持と連帯を示して頂きたい。
シェラップ・ガツェリンの全ての生徒より。」
プラカードに「私の家族を殺すなかれ。私の兄弟姉妹を逮捕するなかれ」
中国当局は焼身に関わったものを殺人罪で訴えると公表。焼身者の家族、親戚、関係者を拘束し、携帯に焼身者の写真を保持していたとして1人の僧侶に懲役刑を与えている。
筆者プロフィール
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中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)