チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年12月6日

刑期10年半 獄中のチベット人作家に「劉暁波勇気文学賞」が贈られる

Pocket

dolma_jip刑期10年半を受け獄に繋がれているチベット人作家に、国際PENクラブ公認団体である独立中文筆(PEN)会が今年の「劉暁波勇気文学賞(獄中作家賞)」を贈った。

この賞は先月15日、「国際PENクラブ獄中作家の日」にチベット人作家ドルマ・キャプと中国人作家呉義龍に贈られた。この国際記念日は基本的人権である表現の自由を行使することにより捕らえられた作家への認識を広め、支援するために設けられたものである。

ドルマ・キャプ(སྒྲོལ་མ་སྐྱབས་36、ペンネームはロプサン・ケルサン)はラサで中学校の教師をしていた2005年3月9日に逮捕され、同年11月30日にラサ中級法院が秘密裁判の後、国家の安定を害したとして10年半の刑期を言い渡した。最初ラサのチュシュル刑務所に服役し、2007年7月、青海省西寧の刑務所に移された。現在もそこに収監されている。

彼は「チベットの全ての兄弟姉妹に贈る手紙」の中で「我々は怖れることもないし、涙を流す必要もない。我々は必ず勝利する。あなた方、近しいチベット人の兄弟たち、血肉を同じくする者たちよ、我々は必ず最後までやり通さねばならない。何時の日にか栄光に満ちた者となるであろう」と語る。

454ドルマ・キャプは1976年、アムド、アリ(མདོ་སྨད་ཨ་རིག་青海省海東地区ドラ県ドンルン村)に生まれ、アリの小学校、県の中学校、青海省師範学校と進み、卒業後ドラ県の中学校の教師を勤め、さらに北京の大学で研究を続けた。

2003年にはインドに亡命しダラムサラのソガスクールで英語を習うと同時に、中国語で「༼ལྷིང་འཇགས་མེད་པའི་ཧི་མ་ལ་ཡ༽ 動揺のヒマラヤ」と題された著書を書き始めた。これは57章よりなり、民主主義、チベットの主権、共産党下のチベット、植民地化、宗教等幅広いトピックスについて書かれている。

2004年には再びチベットに戻り、ラサで中学校の教師の職を得た。その傍ら、チベットの地理的側面に関する著書を書き始めた。この中には中国の軍事基地の位置や数に関する敏感な情報も含まれていた。

もう1人の受賞者である呉義龍はインターネット作家、中国民主党(China Democracy Party )の活動家であり1999年に11年の刑期を受けた。2010年9月14日に刑期終了、解放されている。

独立中文筆会は受賞者発表の声明の中で「書き、出版することを含む表現の自由は奪うことのできない基本的人権である」と述べ、されに、8人の新たな名誉会員を発表した。この中にはチベット人作家であるタシ・ラプテン、クンチョク・ツェペ、ガンケ・ドゥパ・キャプ、クンガ・ツェヤンが含まれている。

国連の恣意的拘禁に関する作業部会もドルマ・キャプのケースは国際人権法の第13、19、及び20条に違反する恣意的拘禁であると認定している。

参照:5日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7008
5日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32611&article=Tibetan+writer+Dolma+Kyab+awarded+by+Chinese+writers’+group

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

ちべろぐ

Archives

  • 2018年3月 (3)
  • 2017年12月 (2)
  • 2017年11月 (1)
  • 2017年7月 (2)
  • 2017年5月 (4)
  • 2017年4月 (1)
  • 2017年3月 (1)
  • 2016年12月 (2)
  • 2016年7月 (1)
  • 2016年6月 (1)
  • 2016年5月 (9)
  • 2016年3月 (1)
  • 2015年11月 (1)
  • 2015年10月 (2)
  • 2015年9月 (4)
  • 2015年8月 (2)
  • 2015年7月 (14)
  • 2015年6月 (2)
  • 2015年5月 (4)
  • 2015年4月 (5)
  • 2015年3月 (5)
  • 2015年2月 (2)
  • 2015年1月 (2)
  • 2014年12月 (12)
  • 2014年11月 (5)
  • 2014年10月 (10)
  • 2014年9月 (10)
  • 2014年8月 (3)
  • 2014年7月 (9)
  • 2014年6月 (11)
  • 2014年5月 (7)
  • 2014年4月 (21)
  • 2014年3月 (21)
  • 2014年2月 (18)
  • 2014年1月 (18)
  • 2013年12月 (20)
  • 2013年11月 (18)
  • 2013年10月 (26)
  • 2013年9月 (20)
  • 2013年8月 (17)
  • 2013年7月 (29)
  • 2013年6月 (29)
  • 2013年5月 (29)
  • 2013年4月 (29)
  • 2013年3月 (33)
  • 2013年2月 (30)
  • 2013年1月 (28)
  • 2012年12月 (37)
  • 2012年11月 (48)
  • 2012年10月 (32)
  • 2012年9月 (30)
  • 2012年8月 (38)
  • 2012年7月 (26)
  • 2012年6月 (27)
  • 2012年5月 (18)
  • 2012年4月 (28)
  • 2012年3月 (40)
  • 2012年2月 (35)
  • 2012年1月 (34)
  • 2011年12月 (24)
  • 2011年11月 (34)
  • 2011年10月 (32)
  • 2011年9月 (30)
  • 2011年8月 (31)
  • 2011年7月 (22)
  • 2011年6月 (28)
  • 2011年5月 (30)
  • 2011年4月 (27)
  • 2011年3月 (31)
  • 2011年2月 (29)
  • 2011年1月 (27)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (22)
  • 2010年10月 (37)
  • 2010年9月 (21)
  • 2010年8月 (23)
  • 2010年7月 (27)
  • 2010年6月 (24)
  • 2010年5月 (44)
  • 2010年4月 (34)
  • 2010年3月 (25)
  • 2010年2月 (5)
  • 2010年1月 (20)
  • 2009年12月 (25)
  • 2009年11月 (23)
  • 2009年10月 (35)
  • 2009年9月 (32)
  • 2009年8月 (26)
  • 2009年7月 (26)
  • 2009年6月 (19)
  • 2009年5月 (54)
  • 2009年4月 (52)
  • 2009年3月 (42)
  • 2009年2月 (14)
  • 2009年1月 (26)
  • 2008年12月 (33)
  • 2008年11月 (31)
  • 2008年10月 (25)
  • 2008年9月 (24)
  • 2008年8月 (24)
  • 2008年7月 (36)
  • 2008年6月 (59)
  • 2008年5月 (77)
  • 2008年4月 (59)
  • 2008年3月 (12)