チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年12月5日
電話で友人に最後の言葉を残す / 焼身に関わったとして地区の指導者逮捕
僧ロプサン・ゲンドゥン生前の写真。
12月3日にゴロ州ペマ県で焼身、死亡した僧ロプサン・ゲンドゥンは仲間の僧侶に最後の言葉を伝えていた。
「俺は今、焼身抗議を行うために準備したところだ。ガソリンを身体にかけた。後はバッテリー液を飲むだけだ。その後、火を付ける」と言い、続けてチベット人の団結を願う言葉を残した。
「最後の言葉をノートしておこうと思った。でも、俺は字が下手だから止めた。その代わりにお前に電話する。俺の願いは3つの地区(ウ・ツァン、カム、アムド)のチベット人が全て一致団結し、仲間同士で争わないということだ。そのようにすることができれば、我々の願いは叶えられるであろう」と。
彼の遺体が安置されているペナク僧院には、昨日から千人近い人々が連帯を示すために集まり、カタを捧げ、灯明が灯され、法要が行われている。また、彼が残した言葉である「民族団結」を誓い合う儀式も行われたという。葬儀は今日5日に行われる予定。
これに対し、当局はペナク僧院に向かう道を閉鎖し、法要や葬儀に参加しようとする人たちを阻み、多くの人たちが近づけない状態という。
また、当局は彼が焼身した3日の夜、地区の有力者であり、もめ事の仲裁者として有名であるバシュル・ドドゥク(ཝ་ཤུལ་རྡོ་བྲུག་)を焼身に関係したとして拘束した。彼は2008年にも抗議デモを先導したとして逮捕されている。(その他VOAによれば、未確認だが他にも数人のチベット人が焼身に関係したとして拘束されたという)
現在、ペナク僧院を中心にペマ県一帯に大勢の部隊が配備され、厳重な警戒体勢が敷かれ、昨日から電話とネットが切断された状態という。
ペナク僧院カダク・トゥデル・リン(པད་ནག་དགོན་ཀ་དག་སྤྲོས་བྲལ་གླིང་)はニンマ派の僧院であり、現在約100人の僧侶が所属する。ペマの中心から7キロほど離れた場所にある。
参照:5日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7015
5日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32606&article=Self-immolator+leaves+message+of+‘unity+and+solidarity’+among+Tibetans
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)