チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年12月2日
日本人画家井早智代さんの「焼身者に捧げる絵」
昨日から今日にかけ、今のところチベットから新たな焼身のニュースは入っていない。ほっと一息入れているところである。
今回は最近ダラムサラに滞在され、新たな焼身者が出る度に、彼らのことを想い、彼らに捧げる絵を描かれている日本人女性とその最近の絵を紹介する。
この日本人画家の名前は井早智代さん。普段はカナダのバンクーバーにお住まいとのことだが、この数年何度もインドに来られ、特に最近は相次ぐ焼身者のことが気になり、ダラムサラに長期滞在し彼らの絵を描くことが多いと言われる。
彼女はダラムサラでヴィジルがある度にこれに参加され、写真を撮っておられた。その姿は見かけてはいたが、彼女がこのような絵を描いておられるということは最近まで全く知らなかった。最初に彼女の絵を紹介して下さったのはウーセルさんであった。
井早智代さんは美術を主にカナダで勉強され、アルバータ大学美術デザイン学部版画科の修士過程を終了されている。
それぞれの絵には短い説明が付け加えられている。それらは英文だが、日本語に直して添付した。これまでに焼身者に捧げる絵は30枚以上描かれておられるが、今回はその内最近の数枚のみ紹介させて頂く。その他の絵もご覧になりたい方は彼女のフェースブックhttp://www.facebook.com/tomoyo.ihaya にアクセスして頂きたい。
絵は日本の雁皮紙の上に描かれ、多くの場合周辺が日本の線香により細かく焦がされている。また、日本の千人針に意を借り、絵が糸で縫われていることも多い。
最新のものより順次。
11月27日に、サンチュ県サンコク郷で焼身、死亡したサンゲ・タシ、18歳(詳しくは当ブログhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51771006.html 以下同様)、
同じく11月27日に、ンガバ州ゾゲ県キャンツァ郷で焼身、死亡したケルサン・キャプ、24歳http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770946.html に捧げる。
2人ともチベットの自由のために焼身した。
ケルサン・キャプ、最後の言葉「雪国チベットに幸せの太陽が昇らんことを」
願わくば、あなた方の草原と山と聖なる湖へと戻られる旅の間中、心に光が輝き続けますように。
11月7日、チベット自治区ナクチュ地区ディル県ペカル郷で焼身し、最近になり11月18日に獄死していたことが判明したツェギェ、27歳に捧げる。彼には2人の幼い子供がいた。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770986.html
あなたは暗い獄に繋がれたまま、治療を受けることなく、放置されていた。
私たちの心はあなたの苦痛を想い、涙と苦しみで燃える。
暗い二週間の間、あなたは何を感じ、何の臭いを嗅いでいたのか。
窓を通して太陽や月や星を見ましたか?
あなたを助けることができなくて、本当にすみません。
もう痛みはない。
11月26日にカンゼ州セルタで焼身したワンギェル、20歳。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770800.html
同じく11月26日にルチュ県アラ郷で焼身、死亡したゴンポ・ツェリン、24歳。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770816.html
ワンギェルは炎に包まれながら、セルタの金の馬の像に向かって走り、その傍で倒れた。
11月25日、ツェコ県ドカルモ郷で焼身、死亡した17歳の尼僧サンゲ・ドルマへ捧げる。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51771010.html
彼女の辞世句の冒頭:
お戻りになられた
チベット人たちよ 見上げよ
黄昏の蒼い空を 見上げよ
白い雪山の天上の天幕のような
私のラマがお戻りになられた
…….
ツォ・ペマ(ダラムサラから6時間ほどのところにある聖湖)を巡るキャンドル・ライト・ヴィジル(マルメ・トンコル)に参加した。
夜、高天原チベットで焼身した人々のために湖を巡り、祈りを捧げた。
願わくば、亡くなられた人々へ、生き残った人々へ、私たちの祈りの声と光が届きますように。
11月22日、レゴン県ドワ郷で焼身、死亡したルンブム・ギェル、18歳http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770394.html
同じく11月22日、ルチュで焼身、死亡したタムディン・キャプ、23歳http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770444.html
に捧げる。
清らかな川の上、白いヤクと白い船があなたたちを運ぶ。
私たちはツァンパとバターティーと灯明を捧げ、
光に満ちた次の生へと、安寧の内に渡られることを祈る。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)