チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年11月29日

チベット各地でチベット人知識人60人以上が焼身者に連帯を示すためのハンスト

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73589_383315655083796_83895527_nチベット各地でハンストすると明言するネット上の声明。

ダラムサラ・キルティ僧院の僧カニャク・ツェリンが一昨日の夜、伝えたところによれば、11月26日の午後10時から28日の朝8時まで、自治区首都のラサをはじめ、カムのカンゼ、ダンゴ、ジョンダ、ザチュカ、ティンドゥ、セルタ、アムドのレプコン、それに西寧と成都で60人以上のチベット人が時を合わせそれぞれの地区でハンストと連帯の祈りを行ったという。

このハンストに加わったのは大学の学生、政府職員、作家、僧侶、商人等で全て知識人として知られた人たちだという。このハンストの意味はこれまで内外合わせ90人以上が焼身し、さらに多くの人々が獄に繋がれているという状況に鑑み、彼らに連帯を示すためだという。

このニュースは一昨日の夜、僧カニャク・ツェリンがメールで知らせていたものだが、私は直ぐにブログに書くのをひかえていた。その間にもチベット系メディアは全てこのことを報じた。このニュースは「これから60人以上の知識人が焼身者に連帯を示すためにハンストを行うぞ」というものだが、実際、一体どのような仕方でやるのか、そのやり方次第では即拘束されるとか、例えば政府職員等は即クビになるのではないか?とおもわれた。続報が入るのを待っていたのだが、今のところ何も入っていない。だから、どのような仕方で行われたのかは不明である。

ただ、このようにチベット各地を結ぶ知識人の連絡網があることは確かであると思った。ネットや電話を使い彼らは常に連絡し合っていると思われる。

0030アチョク僧院で行われた焼身者への連帯を示す法要。

焼身者の急増を受け、このように焼身者に連帯を示すという動きは各地で僧院を中心に行われている。例えば、昨日28日にもアムド、ツォロ(海南チベット族自治州)のチコルタン県にあるアチョク僧院に500人のチベット人僧俗が集まり、法王の写真を掲げ、法王の長寿を祈るとともに、これまでの焼身者全員を供養する法要が行われたという。

しかし、これに反し、内地でも「もう焼身は止めよう」という訴えも上がっているという。例えば、RFAによれば、今週、焼身が続くアムド、レゴンで地区のチベット人ラマ、ゲシェ、政府職員、長老たちが連署で声明を発表したという。

その最初には「社会と民族に真の愛情を持ち、人間生活の価値を知る我々は、膝まづき、両手を合わせ、汚れない心と共に、焼身という絶望的な行為を止めるようお願いする」と書かれているが、続けて「世界平和と真に安全で調和した社会を築くには、長期的で広い視野が必要だ……忍耐が必要だ」等と書かれており、これは政府の意向を反映した、別のやり方によるチベット人懐柔策の1つではないかと疑える代物である。

「焼身を止めて下さい」とアピールすることはすでにウーセルさんやアキャ・リンポチェ等が行い、カルマパや亡命政府も行っている。法王もはっきりとはおっしゃらないが、間接的な言い方で焼身を止めるようにとおっしゃっている。しかし、実際に焼身する人々にはこのような遠くの声は届かず、日々直接的に経験する弾圧や、間近に見たり聞いたりする同胞の焼身のインパクトの方が余程強く、数が増えれば世界も動いてくれるはずだとの期待もあり、連鎖反応が止まらないのであろう。

参照:27日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6968

28日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/protest-11282012200948.html

このRFAの記事の中には、26日に衛生学校の生徒たちによる大規模な抗議デモが発生したチャプチャで、28日、こんどは技術学校(工専)の生徒たちがデモを行い、こちらも部隊により武力弾圧され、5人が逮捕、大勢が負傷したと書かれている。部隊は学生たちに向かって催涙弾を放ち、何かしらの爆発物も投げ込まれたという。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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