チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年11月25日
カンナムスタイル・チベット版 「チベット人VS習近平」
このところ、ブログは焼身一色。日本のみなさんもう見飽きたのか、アクセスは増えるどころか減る傾向。どうしたものか、、、焼身の知らせが入れば、書かないわけにいかないし、だ。
ま、そこで、今日は日曜日ではあるし、今日は焼身ありませんように、と祈りつつ、少しは明るく笑えるネタを!
自由な外地に逃れたチベット人や特にその2世、その中でも特にアメリカで教育を受けたチベット人たちがチベット問題を訴えるやり方はこれだという見本をお見せする。
大体チベット本土でもなにもみんなが「もう焼身しかない」と考えてるわけじゃない、今もデモを行っている人もいるし、書ける人はブログや著書を通じ、歌える人は歌を通じチベット人としてのアイデンティティーを強調することで間接的な抵抗運動を行っている。もっともこれらも非常に危険な行為ではある。逮捕され刑期を受けた人も多い。
もっと穏やかな抵抗運動としてはラカル運動がある。毎週水曜日には必ずチベット服を着て、チベット語だけを話し、僧院などにお参りに行こうというものだ。その他、中国の店から野菜やその他の品物を買わないようにしようというのもある。
外地の支援グループであるSFTはもっとも新しいグループの1つであり、そのやり方はネットをふるに使ったニュース作りである。
今日、紹介するのは、(ちょっと古くなったが)例の「カンナムスタイル(江南スタイル、Gangnam Style)」のチベット版。韓国のPSYはそんなつもりで作ったわけではないだろうが、いまや世界中にこのパロディ版があふれ、その多くは、今や政治的メッセージを含めるというのが流行となった。
以下、4本のビデオを紹介する。一本目は敬意を表するためにそのオリジナル版(もう何度も見たという人は飛ばされよ)。2本目は中国の反体制芸術家アイ・ウェイ・ウェイ氏が主演するもの(これももう有名なので飛ばされてもよし)。3本目は本土チベット人が作った「草原版」。アムド、ゴロのチベット人たちが草原で長い袖を振り回す。4本目が目玉のダラムサラ・カンナムスタイル「チベット人VS習近平」。
以下のビデオは北京で「十八党大会」が開かれる1日前の11月7日にITN(国際チベットネットワーク)とSFTI(Student for Free Tibet India)が共同で制作したもの。撮影場所はダラムサラのSFT事務所前の狭い空き地とその前の路上のゴミために集まる牛、ちょっと上に上がった街中のマニコロ場と路上の野菜売り場。とてもローカルな場所ばかりだ。大きな習近平のお面はイギリスで制作されダラムサラまで送られて来たというもの。これを被っているのはITNのアジアコーディネーターであるチュドゥップ氏、その他の出演者はSFTの若者と街のおじさん、あばさんたち。おじさんたちが「プギェロー(チベットに勝利を)!」と叫び、おばさんたちが野菜を売る習近平に抗議している<これは内地で行われている中国の店から野菜を買わない運動を表すそうだ。
なおこのビデオはTIME紙やワシントンポストでも紹介され、発表数日にして3万ヒットを越えたという。もっと詳しい説明は>https://www.studentsforafreetibet.org/news/time-magazine-features-tibetan-gangnam-style
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)