チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年11月20日
<速報>今日 サンチュで再び焼身・死亡 3児の父 今月16人目 内地80人目
今日、11月20日、現地時間午前8時半頃、アムド、サンチュ(བསང་ཆུ་རྫོང་甘粛省甘南チベット族自治州夏河県)アムチョク(ཨ་མཆོག་阿什合曲郷)ギャガル草原にあるゴン・ンゴン・ラリ金鉱山開発場の入り口付近でツェリン・ドゥンドゥップ(ཚེ་རིང་དོན་གྲུབ་)、34歳が中国政府の圧政に対する抗議の焼身を行い、その場で死亡した。
ツェリン・ドゥンドゥップはアムチョク郷キゲン村の出身。父の名はルブム・ギェル(61)、母の名はドゥクモ・ツォ(52)、妻の名はタムディン・ツォ。2人の間にはラモ・キ(16)、ラトゥク(15)、ラモ・キャプ(8)という3人の子供がいたという。
彼はいつも微笑みを絶やさず、正直で、村の人々にも大変好かれていたという。常にチベット人の福祉に関心が強く、チベット問題に付いて語るときには熱かったという。特に地区の鉱山開発を憂慮していたとも。
現在、アムチョク僧院の僧侶とチベット人が大勢集まり法要を行っている。10月26日に同じアムチョク郷でラモ・ツェテンが焼身http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51767018.htmlして後、地区には大勢の軍と警察が常住しているという。
これで内地焼身者の数が80人となった。内死亡確認66人。今月だけで、すでに16人が焼身している。
追記:TCHRDによれば、この金鉱山開発は地域の聖山をえぐるように進められており、住民の飲み水が汚染されたり、草原が荒れたりという問題が発生しているという。これに対し、地元のチベット人たちはこれまでに何度も地元政府に対し、開発を中止することを求める陳情書を提出したり、抗議デモを行った。しかし、政府はこれを無視し続けていた。
ツェリン・ドゥンドゥップはもちろんチベット全体に関わる中国の圧政に対し抗議するという意図もあったと思われるが、焼身した場所がこの金鉱山の入り口付近であったということで、特にこの金鉱山開発に抗議する目的で焼身したと思われる。
参照:20日付けTibet Times チベット語版http://tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6938
20日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32477&article=Breaking%3a+Another+Tibetan+burns+self+to+death%2c+Toll+reaches+78
20日付けVOAhttp://www.voatibetanenglish.com/content/article/1549512.html
21日付けTCHRDリリースhttp://www.tchrd.org/index.php?option=com_content&view=article&id=313:tibetan-man-dies-of-burning-protest-at-a-gold-mining-site&catid=70:2012-news&Itemid=162
ツェリン・ドゥンドゥップの妻と3人の子供。内1人は僧侶と思われる。
バンクーバー在住の日本人画家Tomoyo Ihayaさんが金鉱山前で焼身したツェリン・ドゥンドゥップを描いた絵。「あなたの遺体からは緑の草が生えるでしょう。そして、その場所は聖なる草原となる。あなたは黄金の光の中にいる」
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)