チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年11月18日

ダライ・ラマ法王が「第2回国際チベット支援特別会議」でスピーチ 今こそ「行動せよ」と

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_DSC6186法王の到着を待つTCVの子供たち。

16日から3日間の予定で、43カ国200人ほどが集まり始まった「第2回国際チベット支援特別会議」は今日終わった、採択された決議案は明日記者会見が開かれ発表される。ま、会議の内容については日本から参加された方々が日本でレポートされると思うので、そちらに任せる。

今日は昨日その会議に法王が来られてスピーチされた話を写真と共に紹介する。

_DSC6338法王がTCVに来られるのは稀なので、この日は朝早くから子供たちが道の両側に勢揃いして法王の到着を待ちわびていた。

上級生の女の子たちはチュバ姿。

_DSC6227午前9時過ぎに法王ご到着。

お迎えの代表は支援団体代表のインド人Dr.N.K.Trikha氏。

_DSC6297以下、この日の法王のスピーチをかい摘んで紹介する。

「チベットは困難な時期に遭遇している。このような時に、あなた方は国際的コミュニティーの代表としてここに来られ、深い憂慮と支援を表明されている。我々の支援者はプロ・チベットではなく、正義と非暴力を支持する人々である

「チベットの闘いは非暴力の闘いであり続けている。世界中の多くのコミュニティーが困難に直面している。しかし、残念ながら多くの場合、その主張は高潔でありながらも、その問題を解決する手段として暴力を用いている」

_DSC6265「チベット内地で焼身が続いている今、支援者たちはそれぞれの地域で実際の行動を起こして欲しい。それぞれの国にはすでにチベット支援議員や議員団体があるはずだ、彼らと連帯して行動することもよいであろう」

「チベットの闘いは始めから非暴力主義に基づいている。チベットで焼身している人々は、自らの命を犠牲にする勇気と決心を持っているのであるから、他人を害そうと思えばそれも簡単であったろう。しかし、自分への暴力はあろうが、基本的には他に対する非暴力を貫いていると思う。だから、あなた方のチベット問題への支援は我々を勇気づけ、道徳的支援を与えてくれる。その支援が身を結び、非暴力の闘いは成功すべきなのだ。そうでなければ、同じような問題に直面している人々が『非暴力は意味がない、何も得る事はできない』と思うであろう」

_DSC6371以下の写真はスピーチが終わり、外で各グループに別れ記念撮影が行われた時のもの。

人は暴力的な対立にのみ興味を持ち、解決すべきであると思う癖があるが、これは完全に間違っている。暴力は怒りより生じる。自信がない時に人は銃を用いる。だから世界的に言っても、完全な非暴力的手段は成功すべきなのだ。少なからぬ中国の民主活動家も我々の運動に連帯を示してくれている。」
と話された後、チベット問題を環境、文化、現在の状況に分けて説明された。

_DSC6362インドを含む、アジアグループ。主なチベット人NGOもこの中に入る。

環境については、チベットが地球の第三極であること、アジアの主要な河川の水源であることよりチベットの森林破壊、鉱山開発等の環境破壊は世界的な影響を及ぼすと言われ、最後に「朱鎔基が首相であった時代に、チベットの環境は保護されるべきだという指示が出されたと聞く。しかし、ローカルレベルにおいては腐敗が故に実行されることはなかったと言う」とコメントされた。

_DSC6363アジアグループ部分拡大。この中、最後列に代表のラクパ・ツォコさんを囲むように日本からの参加者5人の姿が写っている。代表の左手にSFTJ代表のツェリン・ドルジェさん。その左に同じくSFTJの金田太郎さん。代表の右手1人おいて仙台の椿ラマ。その右手の2人の女性は椿ラマのお付きの人だが、名前を聞忘れた。もっともこの3人は会議の討論には参加されずにオブザーバーに徹しておられたと聞いた。

_DSC6384ヨーロッパグループ部分。

法王のお話の続き:チベットの文化については、その核である仏教としてナーランダ大学の伝統が伝えられた後、それは単なる祈りや儀式ではない、真に心を変容させるための実験と研究という性格を持つに至ったとし、その文化の特徴は平和と非暴力であると語られる。故にチベット文化の保存は平和と愛、慈悲の伝統をも守るという意味で重要なのだ、これが世界に貢献できるからだと強調された。

_DSC6408南北アメリカグループ。

そして、「インドはもっとも巨大な民主国家であり、中国はもっとも巨大な全体主義国家だ。印・中関係は平和、相互信頼、協力の精神を基礎とすべきだ。そうすれば両国に多大な利益がもたらされよう。中国が国境沿いに膨大な軍隊を駐留させれば、自然にそれは恐れと猜疑心を生む」

_DSC6418センゲ首相、デキ・チュヤン外相を含む亡命政府職人と(一部)。

世界のトレンドは開放、民主主義、自由、法治に向かっている。だらか、中国政府が如何に強大であろうと、この世界のトレンドに逆らうことはできず、従うしかないのだ。中国の新指導部はこの現実を理解するであろう。鄧小平は『事実に基づき真実を求めよ』と言ったが、事実とはこの事なのだ。彼らは真実に基づき政策を決定しなければならない。非現実的な政策により問題は解決されないのだ」と語られた。

_DSC6463TCVの生徒たちに話し掛けられる法王。

チベットの現状のついては、「私はもう引退したから政治的なことについて言うことはない。選挙で選ばれたチベット人のリーダーの言う事は全面的に正しい」と前置きされ、「チベットの状況は極めて厳しい。問題は存在し、それはチベットにとっても中国にとっても良くない事だ。力を用いる事は決して満足ある結果をもたらさない」
「チベットの文明は非常に洗練されたものだ。中国人の中にはチベット人は非常に遅れていると言うものもいるが、それは間違っている」
「今、チベット内地の新しい世代のチベット人たちのスピリットと団結は私の世代よりも強くなっている」等と述べられた。

Japこの写真だけはTibet Netより。部会で金田太郎さんが発言しているところ。

私は1990年に初めてダラムサラで「チベット国際支援グループ会議」が開かれた時、出席している。この時は参加者も少なくほとんど欧米人だけであった。その後2008年デリーで行われた「第1回チベット支援グループ特別会議」に出席した。この会議には牧野聖修議員も参加されていた。2010年には「チベット支援グループアジア地区会議」がダラムサラで開かれた時にも参加した。で、今回はパス。この会議はもろ参加型でなかなか中身の濃いものである。もっとも、ここで採決される行動指針は国際基準であり、日本では様々なファクターにより実行はなかなか難しいと言えようか?

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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