チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年11月10日
「妻の焼身は家庭内不和が原因」と書かれた書面へのサインを拒否した夫が行方不明に
最近、当局は、8月7日にツゥ僧院の仏塔前で、夫と幼い子供2人を残し焼身、死亡したドルカル・ツォの夫サンゲ・ドゥンドゥップに対し、「妻の焼身は中国政府に対する抗議ではなく、家庭内不和が原因であった」という書面にサインすれば、見返りに金を与えよう、と提案した。夫はこれをきっぱり拒否した。その後、約一週間前に彼は当局により秘密裏にどこかに連行され、今も行方不明のままという。
(ドルカル・ツォの焼身については>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-08.html?p=3#20120807
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-08.html?p=2#20120808)
当局が焼身者の家族に偽証と報奨金を持ちかけたのはこれが初めてではない。10月半ばには10月6日に同じツゥ県のドカル僧院の仏塔前で焼身抗議を行い、死亡したサンゲ・ギャンツォ(27)の家族に対しても同様の申し出を行っており、この時は原因が「夫婦仲」であったと言えば100万元(約1260万円)やると持ちかけてたという。妻はこの申し出をきっぱり拒否している。その後、彼女が拘束されたという話は伝わっていない。(詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-10.html?p=2)
このような嘘の証言を金で買えると考える中国当局はすでに狂ってるが、その上、それに同意しない、悲しみの中にある家族を拘束し、あわよくば、拷問によりサインを強要しようとするのが今の中国なのだ。中央政府に地方から上がって来る報告はこのようにして得られた、嘘ばかりであろう。国全体が嘘で成り立っているというのが今の中国なのだ。
ラサの現状
チベット自治区のラサは「十八党大会」の前からさらに警戒がきびしくなり、危険と判断された多くのチベット人が予備的拘束に遭っているという。
以下のビデオは、ポタラ宮前の広場に治安部隊が結集し、「十八党大会」中の治安を守るという誓いを立てるというイベントが行われたというものだ。この中で1人の武装警官が「共産党への忠誠を誓い、チベット人の安全を守る」と宣言している。実際はこれらすべては「チベット人を脅すため」に行われていることは明らかである。
参照:9日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/students-11092012080044.html
レゴン、学生デモのビデオ
昨日のレゴンにおける大規模な学生デモの様子を伝えるビデオ。2008年以降、最大規模の抗議デモ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)