チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年10月21日
焼身者供養を行い70人以上の僧侶が強制還俗処分
チベット自治区チャムド地区チャムド県メンダ郷(昌都県面達郷)にあるブヤ僧院は、今年3月に焼身抗議者を追悼する法要と、ダライ・ラマ法王の長寿を祈る法要を行った。これ以来当局の弾圧の対象となり、RFA によれば、これまでに2人の僧侶が連行され、70人以上の僧侶が強制的に還俗させられる等、様々な嫌がらせを受けているという。
3月に僧院の読経師である僧ジャミヤン・イシェと僧ドゥプギュが焼身者を追悼し、法王の長寿を祈る法要を先導したとして連行され、それ以来7ヶ月経った今も行方不明のままである。
「彼らは『違法に』僧院の外で一般人に対し仏教を説き、この地区で人気が高まっている『チベット語学習』を推進する活動を行ったことに対しても糾弾されている」と報告者は語る。
3月10日には僧院に中国の役人が来て、僧侶たちに中国国旗掲揚を強要した。この時、僧侶たちは「態度が悪い」と判断され、多くの者が酷い暴力を受けたという。
「70人以上の僧侶が強制的に還俗させられ、僧衣を着ることが禁止された。その他、僧院で授業を行う事が禁止され、僧院長を僧院に近づけさせない等の嫌がらせを受けている」という。
例えば、この僧院の上級教師であったトゥガ・リンポチェ(64)が重い病に倒れた時、当局は彼が病院に行くことを許さなかった。そして、リンポチェは治療を受ける事ができないまま8月16日、亡くなってしまった。
また、僧院と周辺の民家には「中国の偉大な指導者たち」というポスターを掲げなければならないとされ、「これに従わないものは、法を犯したものと見なされる」という。
このメンダ郷は、去年の末から弾圧が続き焼身者も出たカルマ郷に近い場所にある。
参照:19日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/punished-10192012154126.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)