チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年10月15日
ビデオで拷問を暴露した僧ジグメ・ギャンツォ重体/「ジクデル」助手の僧ゴロ・ジグメ再び行方不明
ラプラン僧院僧侶ジグメ・ギャンツォは2008年に逮捕された後、どのような拷問を受けたかをビデオを通じ詳しく伝えた。このビデオは最初VOA、次にyoutubeを通じて広まり、多くの人が彼の証言を聞いた。
ビデオ>http://www.youtube.com/watch?v=Ac-V82xAaUg&feature=player_embedded
日本語訳>http://fireunderthesnow.blogspot.in/2009/03/blog-post_17.html
突然車に引き込まれ、頭に黒いずきんを被らされ、拘置所に連行された後、自動小銃を突きつけられ、「これはお前たちチベット人を殺すためのものだ。少しでも動けば、必ずお前を撃って殺してやる。死体をゴミ箱に捨ててやる。誰も気付きはしない」と脅される。その後2ヶ月間、彼は激しい拷問を受ける。天井から吊るされ意識を失うまで暴行を受けた。意識を失う度に病院に運び込まれ、意識が戻るとまた拷問を受ける。「まるで人を殴っているのではなく、ブタや犬を殴るような」暴行を受けた、と証言。
このビデオを製作したとして2008年11月に再び逮捕され、翌年5月に解放された。そして、また去年8月20日にツォエ(ツゥ 合作)のホテルで拘束される。詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51694825.html
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51695067.html
その後消息が途絶え、危惧されていたが、10月12日付けTibet Netが最新の消息を伝えた。http://tibet.net/2012/10/12/relatives-seriously-concerned-for-monks-arrested-for-exposing-chinese-brutality-in-tibet-in-2008/
それによれば、彼は今、心臓、肝臓等5種類の重い病を患い、蘭州の刑務所内病院で治療を受けているという。彼の親族は当局に対し、病気を理由に解放を懇願したが、拒否された。親族はさらに病気が悪化しこのまま監獄で死ぬのではないかと心配しているという。
<ジクデル 恐怖を乗り越えて>の製作を手伝った僧ゴロ・ジグメが再び拘束される
2008年の北京オリンピックを前にチベット人の本心を収集したドキュメンタリー映画<ジクデル (日本語版:恐怖を乗り越えて)>は日本でも何度か上映された。これを製作したドゥンドゥップ・ワンチェンは6年の刑を受け、今も西寧近くの強制労働キャンプに収用されたままである。そして、この助手を勤めたラプラン僧院僧侶ゴロ・ジグメも、これまでに何度も拘束され拷問を受けている。
同じく12日付けTibet Netによれば、彼は9月20日にツォエに向かった後消息が途絶え、家族が捜索するも未だ、行方を掴めないという。家族は再び当局が彼を拘束し、拷問しているのではないかと心配している。NYベースのジャーナリスト保護協会も10月3日付けで彼に対する憂慮を表明している。
その他参照:11日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/tibetanmonk-10112012174033.html
VOT12日放送分http://www.vot.org/#
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)