チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年10月12日
フランス:56の地方自治体がチベットの市町村を養子に
日本では地方自治体が中国等の都市と姉妹都市縁組みを結ぶということが流行っている。が、これは主に経済・文化交流を目的とするものだ。人権擁護意識の高いフランスでは最近チベットの市町村を、文化、環境、人権擁護の目的で養子にするという運動が流行っている。
亡命政府公式ネットであるTibet Netには9月29日と30日に南フランス、ミディ・ビレネ地方のラヴォール(Lavaur)で、6つの市と町がチベットの6つの町を養子にする式典とイベントが行われたことhttp://tibet.net/2012/10/05/six-french-municipalities-adopts-tibetan-villages/、また10月6日に東フランシュ・コンテ(eastern Franche Comte)地区の1つの市と1つの町で、チベットの町を養子にする式典とイベントが行われたということが報告されているhttp://tibet.net/2012/10/10/france-adopts-two-more-tibetan-villages/。
ラヴォールで行われた式典とイベントには法王の妹さんであるジェツン・ペマ女史が出席されている。
10月6日には東フランシュ・コンテのモンベリアール(Montbeliard)市がチョモランマの麓の小さな町であるカルタを、またアンフレヴィーユ・ラ・ミヴォア(Amfreville la Mivoie)町が西チベットのパリを正式に養子自治体と認定、宣言した。
モンペリアールの市長は式典におけるスピーチにおいて「中国の組織的破壊に直面しているチベットの独特な文化を守らなければならない」と述べ、また「チベット人の非暴力の闘いを全面的に支援し、チベット人の基本的人権を守る必要がある」と強調した。
フランス代表部事務所のツェリン・ドゥンドゥップ氏は「チベットの町を養子にする主な目的は、チベット人の自由と基本的人権を守ることへの支援を表明することだ」と言い、「現時点では、中国政府のせいで、これらフランスの自治体とチベットの町が直接連絡を取り合うということは不可能である。しかし、強い政治的メッセージを送ることはできる」とコメントする。
この養子縁組キャンペーンに参加した自治体では、それぞれ「EUやUNの関連決議案、チベットの人権、環境、文化遺産が侵略地であるチベットにおいて尊重されることを求める動議」が地方議会において可決されている。また、チベットの町を養子にしたという表示看板がそれぞれの庁舎の前に掲げられるという。
このキャンペーンを始めたのはフランスのチベット支援団体だという。50以上の地方自治体に接触し、これを成功させたということは大したものだと思う。ヨーロッパの各国にはこれとは別に3月10日に自治体庁舎の前にチベット国旗を掲げるというキャンペーンに参加している町も多いと聞く。どちらも、各国に在住するチベット人と支援団体、それに代表事務所が一体となり実現しているものと思われる。国を動かすことは簡単ではないが、地方自治体ならちょっとした縁とコネでこのような話もあり得るというわけだ。日本でもいつかこのようなキャンペーンが始まり、成功するばいいのにな~と夢見る。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)