チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年10月9日
焼身を事前に察知されたチベット人 当局により暗殺
RFAとVOTが伝えるところによれば、アムド、マロ、ツェンツァ(གཅན་ཚ་རྫོང་青海省黄南チベット族自治州尖扎県)で焼身を準備していたチベット人が、西寧で当局により暗殺された。
今年8月17日、ドルジェ・ラプテン(་རྡོ་རྗེ་རབ་བརྟན་57)はツェンツァのホテルに室を取り、焼身抗議を行おうと多量の灯油を準備していた。しかし、彼の焼身の計画が当局に漏れ、ホテルが警官に包囲され、彼は拘束された。弟がよばれ、自宅に帰ってもいいが、自宅から離れてはならないこと、何か有った時にはすべて弟が責任をとることになると言い渡された。
自宅に帰った後、2日後から1日に2度づつ警官と役人が尋ねて来て、チェックと嫌がらせが始まった。これに耐えきれず、ドルジェ・ラプテンは病気治療を理由に弟とともに西寧に向かった。23日、当局は西寧で彼の居所を突き止め、泊まっていたホテルに来て、彼を暗殺した。
その後、長男ドゥクゲの下に警察から電話が入り、「父親は死んだ。早く遺体を西寧に引き取りに来て、サインしろ。1人で来い」と告げられた。長男が西寧に到着したときにはすでに父親の遺体は火葬されており、「これが遺灰だ」というものだけが手渡された。
家族たちは父親のドルジェ・ラプテンが暗殺されたということは様々な証拠から明らかだと判断している。しかし、どこにも訴えることができないという。
ドルジェ・ラプテンは長く商売を営んでおり、経済的には余裕があった。焼身を決心したのち、年老いた父親の下を訪れ、財産はすべて地域の貧しい子供たちのために使ってほしいと伝えていたという。
情報を伝えた者の話によれば、ドルジェ・ラプテンは「当局がダライ・ラマ法王非難を強要すること、チベットに自由がないこと、若者たちにチベット語等を学ぶ機会が与えられないこと」に耐えきれず、これに抗議する意味で焼身しようとしていたという。
参照:9月27日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/dorjeerabten-09272012155402.html
10月6日VOTチベット語放送分http://www.vot.org/?page_id=24
10月6日付けVOT中国語版http://www.vot.org/?p=17045
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)