チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年10月5日
ダライ・ラマ法王「中国のチベットに対する新しいアプローチを期待する」BBCインタビュー
ダライ・ラマ法王は、先月終わりにデリーでBBCのインタビューを受けておられる。
その時のビデオと記事が「ダライ・ラマ:中国のチベットに対する新しいアプローチを期待する」と題され9月27日付けで発表されている>>http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-china-19739803
以下、その4分間のビデオを日本語で書き出してみた。
法王:新しい(経済解放)政策に従い、今新しい現実が出現している。富裕層と貧困層の間に大きなギャップが生まれた。だから、胡錦濤は「調和」を促進する政策の必要性を説いた。つまり、これは共産党も新しい現実に従い、政策を変える能力があることを示しているという訳だ。
新しい指導部が「常識」を用い、全体的視野の下に長期的利害を考慮するということができるなら、もう(改革しか)他に方法はないと思う。
力と検閲のみに頼り、閉じられた社会を維持し続けるということは、、、もう自殺に等しい、と私は感じる。このような判断に従い、私は変革のチャンス、政治改革の可能性があると思う。
BBC:もしも、改革が行われないなら、チベットでさらに焼身抗議が続くのか?
法王:それを言う事は難しい。分からない。チベット人としてのスピリットについて言えば、それは残り続けるであろう。
BBC:中国が(チベットに対する)弾圧政策を継続し、焼身抗議が続く場合、あなたの見方、立場は?
法王:非常に悲しいことだ。最初にこの焼身のことを聞いた時、すぐに私は悲しみを表明した。しかし、これはある徴候(symptom)だ。(徴候には)原因と条件がある。その原因と条件に働きかけねばならない。これらは我々チベット人が生み出したものではない。他の誰かが生み出したものだ。
BBC:中国があまりに過酷な状況を作り出し、怒りと拒絶の反応が起っている今、チベットの地位について話し合うことはさらに難しくなったと感じるか?
法王:そうかも知れない。とても悲しい現実だ。我々がチベットにいた頃、もちろん政策に対する不満は表明したが、漢人とチベット人の対立は表面化していなかった。
BBC:世界は中国との経済関係を重視し、中国に注文をつけることを躊躇していると見えるが。
法王:世界は、道徳的プリンシプルと民主主義というプリンシプル、真実、、、
(割り込み)BBC:それで十分だと思うか?
法王:そうではない。人々はなおも真実を重んじるのだ。真実の前に(中国の経済的)大きさは問題ではない。ははは。時に私は「チベットの闘いは真実の力と銃の力の闘いだ」と表現する。短期的には銃の力が勝であろう。しかし、長期的には「真実の力」の方がより強力なのだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)