チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月10日
僧院付属の学校強制閉鎖
今年に入り、何かと話題の多いジェクンド州ティンドゥ県のシルカル僧院。2月に大きなデモを行い、6月には近くのザトゥ郷で2人が焼身し、内生き残った1人を匿い、8月終わりには放生の羊、ヤギを多数引き受け、9月1日には数百人の武装部隊が押し掛け5人が連行された。
そのシルカル僧院から、なぜか私のFBにフォローリクエストの知らせが来た。こんな田舎の僧院がFBをやってるなんて知らなかった。もちろん、壁越えで誰かが代理でやっているのであろう。
フォローしたらすぐに「チベットの学校が中国軍により強制閉鎖された」という、30枚の写真が添付されているエントリーが入った。
他に何も説明がなく、チベットメディアもこのことを詳しく報告している訳ではないので、詳細が分からない。写真を見て想像するしかないのだが、どうも、これは最近の話で、シルカル僧院が直接運営していた学校が閉鎖命令を受けた、という話ではないかと思われる。
ひょっとすると、先日9月1日に部隊に乗り込まれ、その時ついでに閉鎖しろと言われたのかもしれない。
都市部はまだしも、チベット内地の田舎の教育事情は酷いものだ。近くに通える学校が全くないという地区もある。有っても小学校4年までだったり、それ以上は離れた街にある学校に寄宿させなければならない。その場合には親は寄宿費を負担しなければならない場合が多い。また、そこでちゃんとチベット語が学べる保証はない。そんな、こんなで特に遊牧民の親などは子供を学校にやらない、やる場所がないという事が多い。
このような事情を知り、できるだけ子供に教育の機会を与えようと、僧院や小さな団体が学校を運営するということはよくある。本来なら中国当局もこれを歓迎すべきと思うが、当局はこれを嫌う。教育は共産党が施すものだ、それ以外は認めないという方針なのだ。特に子供にチベット語教育を与えることを嫌う。こうして、特に最近、多くの僧院経営の学校やNGOが運営する学校が閉鎖命令を受けている。
写真には試験の様子やみんなにカタが掛けられるというシーンが写っている。ひょっとすると、閉鎖命令を受け急きょ最後の試験を行い、卒業式を行ったのかも知れない。
FBにアカントを持っておられる方は以下にアクセスすれば30枚の写真すべてを見る事ができる>http://www.facebook.com/media/set/?set=a.375413005860296.79128.100001748002848&type=1
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)