チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月5日
カム、バタンで大勢のチベット人がバイクに法王の写真を掲げパレード
8月31日(*1)、四川省カンゼ・チベット族自治州バタン(巴塘)県リンカチュ郷(འབའ་ཐང་རྫོང་གླིང་ཁ་ཆུས་)で地元のニンマ派ジャンカル僧院(བྱང་དཀར་དགོན་)にトゥルク(転生僧)・テンジン・ニマ(སྤྲུལ་སྐུ་བསྟན་འཛིན་ཉི་མ་)を玉座にお迎えする、というイベントが行われた。このイベントには1万人以上のチベット人が集まったという。
この際、バイクに乗った多くのチベット人が写真にあるように堂々と中国で禁止されているダライ・ラマ法王の大きな写真を掲げてパレードを行った。伝わった写真の中にはボンネットにチベット国旗を掲げる車も写っていたという。
この地区では1998年から鉱山開発が行われているが、2009年12月にはこの鉱山開発が環境を破壊しているとして、抗議デモが起った。この時、チベットの国旗を掲げていた若者が逮捕されている。この年の終わりに再度大きな抗議デモが行われたが、この時部隊との衝突が起こり、ツルティム・チュペルというチベット人がその場で殴り殺され、20人が逮捕された。
その後、地区では抵抗の印として「不耕作運動」等が行われた。2010年4月19日にはペトゥップ(23)という僧侶が抗議デモを行い拘束された。RFAによれば彼は拘束中に殺されたという(*2)。
*1、Tibet Expressは8月31日といい、RFAは9月1日という。
*2、RFAはTibet Expressからの引用として「拘束中に殺された」と書くが、Tibet Expressでは「拘束された」としか書かれていない。
参照:9月4日付けTibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/9143-2012-09-04-12-41-55
9月4日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/photo-09042012170920.html
ニンマ派の赤い帽子を冠った法王の写真を掲げて走る若者。みんな誇らしげに笑っている。
このイベント中に部隊が出動したという話はないらしいが、この後、彼らがどうなるかは不明。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)