チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月3日
「ジクデル(恐怖を乗り越えて)」に特別賞 獄中の父親の代わりに幼い娘が受け取る
昨日ダラムサラ・ツクラカンで「民主主義記念日」の式典が終わった後、すぐ傍の「チベットミュージアム」で小さな集まりがあった。幼い少女がお父さんの代わりに特別な賞を受け取った。
チベットの隠された真実を明かすために、ドゥンドゥップ・ワンチェンが様々なチベット人にインタビューしたドキュメンタリー映画「ジクデル(༼འཇིགས་བྲལ༽恐怖を乗り越えて)」は日本でも何度か上映会が行われ、これを見た人もいるであろう。彼はこのドキュメンタリーを作ったことで逮捕され、6年の刑を受け、今も青海省の強制労働キャンプに収監されている。
昨日、在米中国人グループがダラムサラまで来て、この映画を作ったドゥンドゥップ氏に特別賞を与えるという式典が行われたのだ。彼らは「Qi Shi 文化基金」という社会活動を行う団体のメンバーである。会長であるチチャティン女史の父親は中国共産党を批判したとして30年間投獄された。彼女自身も10年間投獄されていたという。この基金は主に、中国共産党により弾圧、投獄された作家や映画監督に賞を与えているという。
同席した亡命政府外務大臣であるデキ・チュヤンは「人権と正義のために貢献している基金」の働きを讃え、この度チベット人に賞が送られたことに対し感謝を述べた。
その特別賞は獄中にあるドゥンドゥップ氏の代理として、彼の11歳の末娘ラモ・ドルマに渡された。
妻のラモ・ツォは先月終わりにアメリカに行った。
日本で公開中の映画「オロ」の中でもこのドキュメンタリーが短く紹介されており、この可愛い女の子もお母さんのラモ・ツォと一緒には出演している。
参照:3日付けTibet Net英語版http://tibet.net/2012/09/03/filmmaker-dhondup-wangchen-awarded-for-leaving-fear-behind-2/
3日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6551
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)