チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月3日
僧侶、尼僧の移動制限/続く連行、行方不明
チャムド地区の僧侶・尼僧に移動制限
9月1日付けRFAより:現在チベット人居住区全域に渡り大量の軍隊が動員され、チベット人が移動するのに非常な困難をきたしている。特にチベット自治区チャムド地区では9月1日より全ての僧侶、尼僧に対し、一切の移動を禁止した。この規制に違反したものは罰すると通達された。
チャムド地区の全ての僧院、尼僧院は保安部隊により日夜監視されている。僧侶、尼僧たちが外に出るのはもちろんのこと、一般信者が中に入る時にも、厳重な検査を受けなければならないという。
さらに、チベット自治区内の全ての僧侶、尼僧に対し、9月1日以降、アムド、ンガバに行く事が禁止された。もしも、緊急の用事でンガバに行かなければならない場合には、夫々の郷、さらに県の担当から許可証を交付して貰わねばならない。そして、期間は2週間に限られ、2週間以上元の僧院、尼僧院に帰らない時には「国家分裂罪」を犯したものと見なされるという。
参照:1日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/china-tighten-security-in-chamdo-tibet-09012012145920.html
セルタで僧侶1人拘束・行方不明
同じくRFAによれば、カム、カンゼ・チベット族自治州セルタ県ネンルンの僧侶デンセル(དྲན་གསལ་35)が今年6月18日に地域の警官により連行された後、現在も行方不明のままという。
連行される前に、警官は彼の自宅を捜査し、書類や手紙を持ち去っていた。連行される一ヶ月前に母親が亡くなり、家には80歳程の父親1人が取り残されているという。
ケンロ、ボラ僧院僧侶が1人
8月28日、甘粛省甘南チベット族自治州サンチュ県ボラ僧院の僧侶ケルサン・ギャンツォ(སྐལ་བཟང་རྒྱ་མཚོ་27)がツォェの浴場に出かけたところで、警官に連行され、それ以降行方不明となっている。
参照:1日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/chinese-local-police-arrested-tibetan-monk-from-serta-in-june-2012-09012012145151.html
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中国当局は人を連行、拘束する時に、何か逮捕状のような書類を示すこともなく、しばしば夜中に突然無理矢理連行する。家族や友人が警察に行き、居所や拘束の理由を問いただしても、答えが帰って来る事は稀である。完全な人権無視だ。このところ、連行されている僧侶たちは、過去のデモに関わったか、チベットの状況を海外に伝えたとかの、所謂政治的嫌疑で連行されたと思われる。連行されれば、尋問中に拷問を受ける事はほぼ間違いない。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)