チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月1日
連行・行方不明が続く/8月10日に焼身・死亡したチュパの写真が届く
リタンで僧侶が1人
8月31日VOTチベット語放送によれば、カム、リタン県リタン僧院僧侶ジャミヤン・テンジン(འཇམ་དབྱངས་བསྟན་འཛིན་30)が8月28日僧坊から警官により突然連行され、行方不明と。家族が警察署に行き問い合わせたところ、警察は拘束の事実を認めたが、理由については一切説明されなかったという。
僧ジャミヤン・テンジンはインドに亡命し南インドのガンデン僧院で学んだことがある。その時の同僚によれば、彼は非常に優秀だったという。その後チベットに帰ったが、故郷に辿り着くまでに7カ所の拘置所を巡る事となった。2007年9月3日、競馬大会におけるロンゲ・アタの演説と彼の逮捕を受け、リタンで愛国再教育が行われた。その時、僧ジャミヤン・テンジンは勇敢にも役人たちに対し、ロンゲ・アタを逮捕した理由を質し、政策の間違いを指摘した。この事により、彼は逮捕され、3年の刑を言い渡された。
獄中に置ける拷問の後遺症により、彼は解放された後も衰弱し、記憶喪失や精神不安定な状態が続いていた。最近、アムドのチベット医学の名医の下で3ヶ月治療を行い、その後症状もやっと少し落ち着いていたところだったという。
参照:8月31日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6534
バルカムで僧侶が1人
僧ロプサン・ラプテン
8月28日付けダラムサラ・キルティ僧院リリースによれば、ンガバ州バルカム県ゲロン・ツォドゥン・キルティ僧院の宗教管理事務所の職員でもある僧ロプサン・ラプテン(བློ་བཟང་རབ་བརྟན། 34)が8月19日の夜中、突然僧坊から消えた。その後、バルカムで警察に拘束されていることが判明したが、連行の理由等は不明のままである。同僧院からは他にも数名の僧侶が当局により拘束されているが、これまでに解放された者は1人もいないという。
ンガバで60歳の俗人が1人
9月1日付けダラムサラ・キルティ僧院リリースによれば、ンガバ州ンガバ県トツィク郷カニャク村(རྔ་པ་རྫོང་སྤྲོ་ཚིགས་ཞང་ཀ་ཉག་སྡེ་བ་)のジャミヤン・ケンコ(འཇམ་དབྱངས་མཁྱེན་ཁོ། 60)が8月28日、警官に突然連行され、行方不明となった。情報を伝えた者によれば、彼はおそらく外国と連絡を取ったという嫌疑で捕まったのであろう、という。
8月27日にンガバで2人が焼身した後、焼身・死亡した僧ロプサン・ケルサンと同室であり、従兄弟でもあった僧ロプサン・サンゲが連行されたが、彼の行方も依然不明のままという。
27日の焼身以降、キルティ僧院の警備は強化され、東西南北の門には大勢の部隊が駐屯しているという。
焼身したチュパの写真が初めて伝えられた
8月10日にンガバ県メウルマ郷で焼身し、死亡したチュパ(གཅོད་པ།24)の写真がやっと亡命側(ダラムサラ・キルティ僧院)に伝えられた。詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51757240.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)