チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年8月22日

ゴンジョ 強制移住/ンガバ 焼身後のデモ拘束者/バゾン 死に瀕し解放 賠償金

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70195880ゴンジョ市街(グーグルアースより)

今日のニュースを幾つか。

カム、ゴンジョで400世帯が移住地も理由も明かされないまま、移住承諾書にサインを強要される

21日付Tibet Expresshttp://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/9030-2012-08-21-11-35-24より。

カム、ゴンジョ(གོ་འཇོ་チベット自治区チャムド地区貢覚県)の400世帯以上が強制移住を迫られ、住民は異常に困難な状態に陥っている。

今月16日から、ゴンジョ県メド郷(སྨད་མདོ་ཤང་)の家々に政府の役人が現れ、住民は移住承諾書にサインを強要されている。21日までに約400世帯がサインさせられた。しかし、一体どこに移住させられるのか、何の理由で移住させられるのかはまったく説明されていないという。

村人や政府職員の何人かが、「ディチュ川をせき止める計画があるようだ」とか、「鉱山開発のためだろう」と噂するが、はっきりとした理由は不明のままだ。

人々がもっとも心配するのは地区にある、リゲ僧院、ダクマル僧院、ゴンサル僧院など5つの僧院がどうなるかだ。以前よりこれらの僧院に対し当局は移転するよう勧告していたという。

「上からの命令だから従うしかない。しかし、どんなところに送られるのだろうかと、大変心配している」と村人は語る。

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理由も、どこに送られるかも知らされず、ただ「承諾書にサインしろ」と命令するのが中国なのだ。反対運動が起らないのが不思議なぐらいだ。実際に政府が用意した家の鍵を受け取らなかったとして懲役刑を受けたチベット人はいる。

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2人の焼身後、デモを行い負傷、拘束された2人の名前が判明

ダラムサラ・キルティ僧院リリースより。参考:21日付Tibet Timeshttp://tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6485

今月13日、ンガバで僧ルントックとタシが焼身した後、2人への暴力を目撃したチベット人たちが抗議デモを行ったが、この時武装警官隊により鋲付き鉄こん棒等で殴られ負傷した後、拘束されたチベット人の内2人の名前が判明した。ラ村カップメのボンコ・キ(བོན་ཁོ་སྐྱིད་44)とゾレップ村のチェチョック(ཆེ་མཆོག48)。ボンコ・キは去年、一ヶ月間拘束され、政治教育を受けさせられたという。2人の行方は依然不明のまま。

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このデモに参加した1人が頭を殴られその場で死亡したとTibet Netが報じていたが、彼の名前や詳細は依然伝わっていない。

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67806d1e3月16日のバゾンにおけるデモ

生きる望みなしと判断され解放、なぜか賠償金がでる

21日付Tibet Expresshttp://www.rfa.org/tibetan/sargyur/Gyarig-Thar-injured-in-Chinese-use-of-explosive-08212012134610.htmlより。

アムド、バゾン(མཚོ་ལྷོ་ཁུལ་འབའ་རྫོང་又はゲパスンド(カワスンド)གད་པ་སུམ་མདོ、青海省海南チベット族自治州同徳県)で今年3月、抗議デモを行い、負傷したチベット人若者ギャリ・タル(རྒྱ་རི་ཐར་)はデモの後、病院に収容され当局の監視下にあった。彼は最近重体となり家族に引き渡された。

この際、当局はギャリ・タルに賠償金として25万元を払い、120平方メートルの家一軒を与えたという。さらに、治療費も政府が負担することを約束した。彼は5ヶ月間病院に収容されていたが、生きる望みななくなったので家族に引き渡されたのであろうと思われている。

バゾンでは3月15日にシンティ僧院僧侶50人ほどが法王の写真を掲げ、抗議デモを行い、全員拘束された。次の日、僧侶たちを解放せよという一般市民のデモが起った。詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51735957.html。この時、部隊は集まった群衆に向かって催涙弾を発射し、爆発物を投げ込んだ。12歳の子供1人が死亡し、7、8人が病院に担ぎ込まれたという。

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デモに参加し負傷したチベット人に賠償金が払われたという話はこれまでに聞いた事がない。じゃ、この時死亡したとされる子供にも賠償金が払われたのか?デモに参加すれば、殺されようが、負傷しようが当局の知った事ではない。例えば、拷問で死にそうになって監獄から解放され、その後死のうと誰も咎められない。家族には一銭も払われない。監獄の中で死んだとしても、これまでに誰か責任者が罰せられたという話は聞いた事がない。

それどころか、古くは文革時代に銃殺された家族に銃弾の金を払わせたという話もあるが、最近でも焼身者の家族が治療費を払えと命令されたという話が伝わっている。

一体今回、なぜ彼にこれほど多くの賠償金が払われたのか?という話をルンタ・レストランで働くチベット人たちに聞いてみた。「そりゃ、きっと、そのチベット人の家族が政府と関係が深かったからだろう。親父が政府高官とか?」という者。「そのチベット人はデモを監視してた私服警官だったんじゃないか?スパイみたいなやつだな」という者。何れ、記事にはなぜ払われたのかについて書かれていないので、想像するしかないわけだが、不思議なこともあるものだ。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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