チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年8月20日

国連がチベット知識人弾圧を確認

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8月3日付けTibet Net:http://tibet.net/2012/08/03/un-apprised-on-crackdown-on-tibetan-intellectuals/

ジュネーブ:国連の表現と言論の自由に関する特別委員会は、チベットにおけるチベット人知識人に対する中国当局の弾圧を確認した。

僧侶、女性を含む少なくとも24人のチベット人知識人が、表現の自由を行使したために数ヶ月から無期の懲役刑を受けている。中国当局は2008年の北京オリンピック以降の弾圧政策の下、特にチベット人作家、ブログ制作者、歌手、教師、ドキュメンタリー制作者、環境保護者をターゲットにしている。

ジュネーブのダライ・ラマ法王代表であるツェテン・サンドゥップは8月2日、(拘束や逮捕、服役の情報が確認されている)64人に上るチベット人知識人の詳細なプロフィールを国連の特別調査官に手渡し、裁判の状況、家族との連絡を含め、彼らの現状を調査することを求めた。

中国共産党の支配の下に生まれ教育を受けた、これら新世代の若いチベット人たちは、特にチベット全土に及んだ2008年3月の抵抗運動以降のチベットの状況に関する情報を集め、雑誌やブログを通じて情報を共有し、意見を発表したことにより刑を受けた。

彼らの記録は2008年の事件とチベットの一般状況に関する政府のプロパガンダへの挑戦であった。チベットの芸術家や知識人への弾圧は文革以来もっとも厳しいものである。

この厳しい統制は資料をコピーしたり印刷するということにまで及んでいる。

2008年12月、公衆衛生の分野で仕事をしていた、41歳のワンドゥは、海外にEメールを送ったとして無期懲役となった。彼はオーストラリア・バーネット医学研究所のラサ支部でHIV/AIDS 予防プロジェクトを担当していた。

2008年10月31日、チベットの伝統的木版マスターであるバルジョル・ノルブが逮捕され、秘密裁判で7年の刑を受けた。(詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51137594.html)彼の家族は何代にも渡りラサのパルコルで僧院のためにお経の印刷を生業としていた。

12人の知識人が拘束時の行き過ぎた拷問により、死に瀕した。当局は収監中の死亡をさけるために彼らを解放した。激しい拷問の結果、解放後身体的、精神的な後遺症が残り、家族に依存せざるを得ないというケースも多い。

37人の知識人が行方不明となっている。彼らの健康状態が心配されている。彼らの家族は脅しを受け、刑務所訪問も許可されない場合が多い。4人の教師が免職処分を受け、1人が減職となった。インドに逃れる作家もいる。

7月12日、EU外交高等弁務官のCatherine AshtonはEU議会においてチベットの状況を説明した。「過去3年間に渡り、多くのチベットの知識人や文化人が罪を問われ、刑務所に送られている。EUはチベット内でチベット人のアイデンティティーや表現の自由が侵されていることに憂慮を示す」と。

女史はさらに、今年に入り焼身抗議や市民と警官の衝突事件が頻繁に発生しており、このようなチベットの状況の悪化に対しEUは注視し続ける、と語った。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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