チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年8月19日

マチュの競馬大会 デブンのショトゥン祭 +警備隊陳列

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85アムド、マチュ(甘粛省甘南チベット族自治州瑪曲県)の草原で、今月13日から数日間行われた「第6回ケサル競馬大大会(གེ་སར་རྟ་རྒྱུག་འགྲན་ཚོཊ་ཆེན་མོ་)」。ご覧のように大勢の警備隊が観客の方を向いて座り込んでいる。

427338_2378560121646_134139404_n嘗て、チベットの至る所で行われていた競馬大会だが、2008年以降、当局は大勢のチベット人が集まる競馬は政治活動の場になる恐れがあるので危険、として禁止することが多かった。しかし、最近は逆に政府が後押しして競馬大会を行わせるということがはじまった。「もう、チベットに問題はない、こんなにみんな楽しげに競馬を楽しんでる」とTVに流すためだ。そのような映像の中ではこんな警備隊はもちろん映されない。

95この競馬、1キロ、2キロ、3キロ、5キロ、10キロレースが行われ、一等金賞には賞金10万元、銀賞には5万元、銅賞には4万元が贈られるという。参加した競走馬はカム、アムド、ウツァンから集められた約800頭。観客の数は当局発表が10万人。チベット人が伝えるところでは2万人。当局発表の方が多く、5倍!?大げさに発表しているらしいというのが面白い。

616当局は5000人の警備隊を派遣し厳重な警戒態勢を敷いたという。また、会場の至る所には「守るべき事」として11か条に及ぶ警告文が張り出された。左がそれ。その第10条にはちゃんと「デモを行ってはならない。焼身を行ってはならない等」と書かれている。

この競馬大会をめぐって、チベット人の間にはちょっとした論争が起った。「チベット人が相次いで焼身抗議を行っている今、競馬大会を開いて楽しむなどもってのほかだ。マチュのやつらは政府の片棒担いでる。焼身者の痛みを全く感じてない」という者。一方では「競馬はチベットの伝統文化だ。チベット人の連帯にも役立つ。どうしてやっちゃいけないんだ」という者に別れた。

今のところ、大きな騒動があったという話は伝わっていない。

参照:17日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6464
16日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/heavy-security-at-machu-horse-race-08162012161120.html

A0fOWFOCMAAVVpIデブン、ショトゥン祭

こちらはラサ、デブン僧院で17日から始まった「ショトゥン祭(ཞོ་སྟོན་)」。毎年この時期一週間行われる。巨大な仏陀釈迦牟尼のタンカ(刺繍の仏画)が開帳され、ラモ等の伝統的な歌や踊りが続く。ラサの人々は弁当を持ち「おいしいショ(ཞོ་ヨーグルト)を飲みながら、オペラ等のトゥン(སྟོན་出し物)を見て」ピクニックを楽しむ。という楽しい休暇が1959年まで続いていたが、チベットが中国に侵略された後、文革が終わるまではもちろん全く開催されなかった。その後再開されたが、2008年以降は特に警備が厳しくなった。

今年もご覧のように大勢の警備隊に囲まれている。当局はついでに「中国共産党が如何に嘗ての農奴制のもとで苦しめられていたチベット人たちを解放したか、今、どれほど楽しい、自由で繁栄した社会を享受しているか」という得意の展示会をショトゥン会場で開いているという。

297028_3606075470408_1216535231_nツイッターでは、この大量の警備隊が写ってる写真を見て「ほほう、タンカの開帳だけでなく部隊の開帳もあるんだな」「これがほんまの政教一致」と揶揄する言葉も流れていた。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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