チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年8月18日
アイ・ウェイウェイ(艾未未)「チベット人の焼身が続いている今、ラサを訪れるのは恥」と
17日付phayul.comより。http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=31922&article=‘Ashamed+of+visiting+Lhasa+as+Tibetans+continue+to+burn%2c’+says+Ai+Wei+Wei
もっとも有名な中国人芸術家であり、また北京の独裁政権を辛辣に批判することでも有名なアイ・ウェイウェイはチベット人が相次いで焼身を行っている今、チベットの首都であるラサを訪問することには「恥を感じる」と発言した。
アメリカの雑誌Foreign Policyのインタビューhttp://www.foreignpolicy.com/articles/2012/08/13/twitter_is_my_city?page=0,1の中でアイ・ウェイウェイは「チベットの人々は(抗議のために)自らを焼き、死んでいる。なのに、誰も気付かない」と言う。
「この2年間にすでに40人以上のチベット人が焼身しているのに、誰もその話をしない」とアイ。
去年ArtReviewにより世界でもっともパワフルな芸術家に選ばれたアイ・ウェイウェイは「チベットの古都ラサを近々訪問したいと思うか?」という質問に対し、「恥ずかしく思う」と答えた。
「いいや、そこに行く事を恥ずかしく思う」とアイ。「(チベット人に)敬意を示すためには、彼らに干渉しない事、ほっておくことが一番と思う」
2008年に北京オリンピックスタジアム「鳥の巣」をデザインしたことにより、彼は国際的に有名となった。しかし、「プロパガンダの片棒を担ぐのは嫌だ」とその開会式に出席することを拒否した。
2008年のチベット人大蜂起の後、アイはレポーターに対し、チベット人の抗議活動を単純に非難することは、漢人とチベット人の間の「憎しみ」を深めるばかりだと発言した。
「チベット人は今、法を犯したとして単純に非難され、罵倒されている。これが問題を解決することになるとは思えない。なぜならば、この事は漢人と少数民族の間の憎悪を強め、相互のギャップを深めるばかりだからだ」とアイ。
漢人は少数民族たちに対する、「自由にしてやった奴隷」と見なす事を止め、過去に犯した過ちを認めるべきだと彼は主張する。
「彼ら(チベット人)には、独自の宗教、独自の文化遺産、独自の思考回路がある。我々は一度も完全に彼らの宗教や生活スタイルを理解したことがない。過去に我々は彼らの寺院と仏像を破壊した。これは基本的事実だ」と彼は言う。
「これらの問題は解決されねばならない。それを避けるのは政治的失敗だ。対話すべきだ。単純に分裂主義者として非難することは適切ではない」と続けた。
2011年4月、当局は政治的動機の下に脱税容疑で彼を81日間拘束した。その後1年間北京を離れる事が禁止された。
この芸術家は、その後もソーシャルメディアや芸術を通じ、引き続き中国政府の情報監視や弾圧を非難し続けている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)