チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年8月17日
鉱山開発に反対するチベット人たちに当局が発砲、1人死亡 住民多数拘束
8月15日、チベット自治区チャムド地区マルカム県チュテン郷(ཆབ་མདོ་སྨར་ཁམས་རྫོང་མཆོད་རྟེན་ཤང་)の住民千人ほどが地区の鉱山開発に反対する抗議デモを行った。警官隊が出動し、抗議のチベット人たちを蹴散らすために催涙弾と実弾を発射。1人が被弾し死亡、6人が拘束された。
RFAが、現地と連絡を取った南インド在住の僧侶ロプサン・パルデンの報告を伝えるところによれば、死亡したチベット人の名前はニマ、拘束されたチベット人6人の内5人の名はダワ、アツォン、プンツォク・ニマ、ジャミヤン・ワンモ、ケルサン・ユドゥン。
「銃殺されたニマは部隊に囲まれ、近づく事が出来なかった」「多くのチベット人がその後逮捕を恐れ山に逃げ隠れ、家に帰れない」とロプサンは伝える。
チュテン郷の鉱山開発は今年始めに始まったが、環境を破壊するとして住民数千人の抗議デモが起こり、一旦開発は中止されていた。8月14日、再び作業員が現場に現れ、開発を再開する準備を始めた。これを見て、15日住民が再び集まり抗議を始めたという。
チュテン郷では金、銀、銅の鉱脈が発見されているという。マルカムではこれまでにも、鉱山開発に反対するチベット人たちの抗議デモが少なくとも2回発生している。2010年5月には聖山に穴を開けているとして数千人のチベット人が抗議デモを行い、部隊の暴行により5人が負傷している。http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=27311&t=1
中国政府はチベットの鉱山資源の豊富さに気付き、まだまだ開発が遅れているとして、膨大な予算を組み開発を加速しつつある。しかし、その開発のやり方は強引で地元の意向は全く無視される。また、開発に伴う公害により人畜に目に見える被害が引き起こされるケースも多い。チベット人は各地で度々抗議デモを行っているが、多くの場合、軍隊や武装警察が出動し暴力や発砲により鎮圧されている。
参照:16日付RF英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/mine-08162012000425.html
同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/mining-08162012150151.html
16日付Tibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/8989-2012-08-16-11-17-54
16日付phayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=31913&article=Tibetan+shot+dead+in+anti-mining+protest+in+Markham
追記:今日のVOT放送によれば、16日、チュテン郷に再び軍隊と警官隊数千人が現れ、山に逃げず家に残っていた女・子供まで集会に駆り立てた。集会においても村人たちは依然鉱山開発に抗議する姿勢を変えなかった。このような態度を見て、部隊は集めたチベット人たちに殴り掛かったという。
チュテン郷には500世帯ほどのチベット人が住むが、その半数が16日に拘束されたという。
また、集まった人々に向け爆発物が投げ込まれたという情報もある。
郷の周辺は軍により完全に包囲され、全く移動できない状態となっている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)