チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年8月7日
昨日の焼身に関するダラムサラ・キルティ僧院リリース
先ほど、ンガバの状況について常に信頼に値する情報を発信し続けるダラムサラ・キルティ僧院が、昨日のンガバにおける焼身に関するチベット語のリリースを発表した。焼身者の名前はロプサン・ティンレーではなくロプサン・ツルティムという。
以下、その訳:
2012年8月6日現地時間午後5時過ぎ、アムド、ンガバ・キルティ僧院僧侶ロプサン・ツルティム(་བློ་བཟང་ཚུལ་ཁྲིམས་)21歳が、キルティ僧院に近い「勇者の道(དཔའ་བོའི་སྲང་ལམ་)」で焼身を行った。スローガンを叫びながら、政府庁舎に向かい走った。道沿いにある森林管理事務所まで達した時、武装警官隊と特別警察隊に囲まれ、消火器で火を消された後、倒され、車に放り込まれ、ンガバの病院に運ばれた。
半時間後、その病院から他の場所に移されたというが、現在その場所は判明していない。
目撃者の話によれば、車に入れられた時「彼はまだ生きていた。炎に包まれながらも沢山スローガンを叫んでいたが、何を叫んでいたのかははっきり聞き取れなかった」という。
ロプサン・ツルティムはンガバ県チャ郷ラルワ村ザダル家出身、母ドンカル・キの息子(རྔ་པ་རྫོང་གཅའ་ཞང་རྭ་རུ་བའི་རྗའ་དར་ཚང་གི་མ་སྒྲོན་དཀར་སྐྱིད་ཀྱི་བུ་)。彼は幼少時よりンガバ・キルティ僧院の僧侶であった。2008年、僧院内で拘束され激しい暴力を受けたという。
現在トゥサムリン学堂の論理学クラスで学んでいた。去年焼身・死亡した僧ロプサン・プンツォク(名簿*中2番)と同じクラスであった。彼はまた、バスケットボールを得意とし、ンガバのバスケットボールチームに所属していた。
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ロンドンベースのFree Tibetによれば、彼は「法王が帰還されるますように!内外のチベット人が再会できますように!」等と叫んだという。
今、ロンドンで行われているオリンピックでは中国が多くのメダルを獲得し、話題となっている。4年前の北京オリンピックは中国が人権を尊重することを約束することで実現されたものだ。オリンピックの最中、こうしてチベットでは今もチベット人が命を犠牲にしながら人権が全くないことを世界に訴え続けている。
*http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-07.html#20120716
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8月8日、追記:ダラムサラ・キルティ僧院によれば、僧ロプサン・ツルティムはバルカムの病院に運ばれた後、間もなくして死亡した。家族が遺体の引き渡しを懇願したが、聞き入れられず、当局が火葬した後遺灰のみが家族に渡された。
焼身の最中、「ダライ・ラマ法王のチベット帰還を!キルティ・リンポチェの帰還を!キルティ僧院内の学校再開を!」等と叫んでいたという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)