チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年7月26日
チベット人が掲げるオリンピックトーチと真理のトーチ
まず、チベット国は今回のオリンピックに参加することはできなかったが、2人のチベット人が本物のオリンピックトーチを掲げたという話。
25日付けphayul.comによれば:http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=31788&article=Tibetans+raise+Olympic+torch+in+London
先の日曜日、ロンドンのSt Martin教会内で行われた、宗教間グループである「宗教世界会議(World Congress of Faiths)」主催のオリンピックを前にした祈りの集会に、チベット仏教を含む9つの宗教グループが招待された。各グループは「自分にしてほしいことを他の人々に対して為せ」という「黄金ルール(Golden Rule)」のもとにそれぞれのヴァージョンを発表する機会が与えられた。
その際、Bristolのトーチランナーがチャリティーのために貸し出した本物のオリンピックトーチがそれぞれの代表者によって掲げられたのだ。ロンドン在住の2人のチベット人、カルマ・チュラ・ツァンとツェヤン・ドルマが壇上に上がり、カルマがスピーチをする間、ツェヤン・ドルマがトーチを掲げたという。写真はそのときのもの。
カルマはチベット語と英語で2種類の文章を読み上げた。まず最初にダンマパダ(法句経(真理のことば):もっとも有名な原始仏典の1つ)の中から「自分が害されると思うことを他人にたいして為すな」を引用し、さらに続けて古いチベット仏教の諺「自分が快く感じないことを他人にしてはならない。この道徳的諺を人々に知らせよ。そしてこれを守れ」を紹介した。
次にこれを補足するようにダライ・ラマ法王の言葉を続けた。「人間として我々はみんな幸せを求め、苦しみをさけようとする。幸せの鍵は内的平安であると学び知った。内的平安の最大の障害は怒り、執着心、恐れ、疑念等の煩悩である。一方、愛、慈悲、普遍的責任感(a sense of universal responsibility)は平安と幸福の源である。もっと簡単に言えば、他人が幸福になって欲しいと思うなら慈悲を行ぜよ。自分が幸福になりたければ慈悲を行ぜよ」
偶然にもこの「宗教世界会議」は1904年、チベットに侵攻したイギリス軍の隊長ヤングハズバンドによって、1936年に創設されたという。
ところで、もう1つのトーチである「チベット真理のトーチ」はインドの南と西と北を出発し、各地でチベット問題を訴え、署名活動を行っている。一昨日の夕方、インドの北ラダックのレーを出発したトーチがダラムサラに到着した。昨日はTCV(チベット子供村)にも行き、3000人近い生徒と職員に迎えられた。
なお、チベット問題に対し国連の具体的行動を促すための署名活動はオンラインでも行われている。賛同する人は是非以下にアクセスし署名を行って頂きたい。
>http://www.thepetitionsite.com/takeaction/198/920/082/
要求など詳しい内容は>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51752200.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)