チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年7月14日

ある亡命者が伝える内地事情と写真

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最近インドに亡命を果たした、匿名希望のチベット人が、亡命チベット議会政治局に伝えた内地情報と関連写真。
原文:http://www.chithu.org/index.php?option=com_content&view=article&id=742:2012-07-11-11-49-21&catid=72:2011-02-16-06-10-47&Itemid=173

1)2008年、チベット3地域(ウツァン、カム、アムド)において平和的蜂起が行われた際、中国当局は必要以上の激しい弾圧を行ったが、このやり方に対し域内の漢人も賛意を示し、チベット人に対し蔑視を露にした。これにより、現在チベット人と漢人の関係は悪化の一途を辿り、お互い一瞥にして嫌悪感を抱くほどになっている。

2)政府で働くチベット人たちは漢人に従うしかないが、政府に対し100%の信頼を持つものはいなくなっている。年配の職員等、家の仏壇に毛沢東の写真を掲げるが、彼らは「心の中にはダライ・ラマ法王がいる」と話している。

3)嘗てはチベットの多くの地区でRFA等の放送を通じ外国からの情報を得る事ができていた。しかし、2008年以降政府は受信器を取り替え、今では中国の放送しか見聞きできなくなってしまった。

4)以前は、自宅の備え付け電話からも遠隔地に電話することができたが、最近は全て近距離以外には電話できない機種に交換された。

5)2008年に逮捕され、刑務所に収監されていたチベット人政治犯が次第に解放されているが、これに対しチベット人たちは勇者と讃え、彼らをカタと記念品をもって暖かく迎え入れて来た。最近、当局はこのようなことを禁止し、取り締まりを強化している。また、刑務所から解放されるときも秘密裏に役人が付き添って家まで届けられるようになった。

6)2008年以降、チベットの政治犯の多くが四川省徳陽の刑務所に収監されている。刑務所側は彼らに対し「罪状を認め、後悔の意を示すならば、すぐにも解放してやる」と言っている。しかし、チベット人政治犯たちは団結し、この申し出を拒絶している。これまで、1人もこれに従った者はいないという。

7)この刑務所の中で刑期がもっとも重いチベット人政治犯はニャロン出身の3人で、1人無期、1人16年、1人15年の刑期を受けている。しかし、彼らの名前は不明である。

8)この刑務所に移送された中国人囚人が証言するところによれば、トゥルク・テンジン・デレック・リンポチェ*は最近トムチン市のタツォック・ゾン*の刑務所に収監されているという。この刑務所はまあまあだが、刑務所側が他の囚人たちに対し、リンポチェは法律に背いた中国の高官だと間違った説明をしているという。

*無実の罪で終身刑を受けているテンジン・デレック・リンポチェについては、例えば>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51316419.html等参照。
*原文>ཁྲོམ་ཆིན་གྲོང་ཁྱེར་ཁྱབ་འོག་ཏ་ཙོག་རྫོང་直訳すればトムチン市のタツォック・ゾン(県)となるが、ゾン=県とすると市の中に県があるのはおかしい、ということになる。トムチンの元の中国名も不詳。

9)政治犯たちは解放後も一週間毎に地域の役所に出向かなければならない。また、どこへ移動する時にも許可が必要であり、解放されても半ば囚人状態である。

10)2008年に平和的蜂起が行われた地区の住民は、他の地区に移動する時には必ず役所の許可証と支持書を得なければならない。

11)ラサでは元々のラサの住民以外はすべて追い出されている。チベット人は誰であろうとラサに入るには5種類の書類が必要である。これがそろっていても、至る所で身体検査等のチェックを受けねばならない。

12)ラサのパルコルやポタラの前の広場をはじめ至る所にあるチェクポストには「中国の人々の安全のために警察はこうしてチェクポストを設けている」と書かれた看板が掲げられている。特にチベット人がチェックの対象となっている。

13)ラサのコルラの道沿いに回教徒の肉売り場が新しく開かれた。これと、ポタラ宮の下にトンネルが掘られたが、これがポタラ宮を害するのではないかと街のチベット人たちは心配している。

14)チベットの聖山の多くで鉱山開発が行われている。その他、多くの山肌が削られているが、これに対し当局は多くの場合「水路を造っているのだ」と説明する。

以下、写真とそれに付けられている説明:

dd2当局が遊牧民たちに与えているこれらのテントには電話等を盗聴する器機が取り付けられていると言われている。

ddddd3ポタラ宮の下を掘ってできた歩行者道。

d6僧院の中には「愛国 愛教」等と書かれた様々な中国政府の標語を掲示しなければならない。

ddddddd5ラサのコルラ(聖なる右繞道)沿いにできた中国の肉屋。

dd4ラサ・ツクラカン前にあるチェックポスト。

dd7車の中で(中国の規制にも関わらず)新首相ロプサン・センゲの就任式のビデオをみているところ。

ddd8同じく中国の禁止、規制にも関わらず、飲食店の中でダライ・ラマ法王の法話を聞いているところ。

d9遊牧民移住村(マニケド付近)。

ddd10 copy聖山における鉱山開発(テホル、トンコル地区)。

zz11他の地域に移動する時にはこのような書類が必要。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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