チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年7月8日

法王曰く「毎日が誕生日」

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7月6日のお誕生日:この日、法王は、街の人々約5000人が祝賀のために集まるダラムサラ、ツクラカン前にお出になり、自らスピーチもされた。これは、異例のことでおそらく初めてのことではなかったかと思われる。直接的には内閣や議会の要請があったのであろうが、特に今年お出になったのは内地からの悲しいニュースが続いていることとも関係あるように思う。

以下はこの日の祝賀会の様子をVOTが11分ほどの映像にまとめたもの。この中、法王のスピーチは6:45~9:00辺りまで。

法王はそのスピーチで、幼少時はやんちゃで勉強にもそれほど熱心ではなかったと話され、内外の多くの原因と条件により今の自分が出来上がったと語られた。

そして「一般に世界では誕生日というものを大事にするものだが、チベット人はこれをそれほど大事と思わないし、私自身も全く何も特別の日だとは思っていない。生まれた日を大事とするなら、毎日が新しい日として大事だと思う。朝起きる毎に新しい日だ、誕生日だと思っている。私は(新しい)毎日が他の人々に対し利を与えることができますように、もしも利を与える事ができない場合にも少なくとも他の人々を害することがないようにと決意しながら過ごしている。他の人たちにもそのようにアドバイスしている。今日77歳となった。私は世界の70億人の内の1人だ。全ての人々を利益しようという思いを起こす力を全ての人々は持っている。私たちは両親の愛情により守られ育ったのだ。他の人々から受けた愛情の量に従い、自らが他の人々に愛情を示す種と可能性がある。人には愛情が必要だ。愛情があれば幸せはやって来る。心に愛情があれば、身体の健康にも利がある。」と「毎日が誕生日」と思いながら過ごされていることを語られ、「愛情の大切さ」を説かれた。

その後、この日を祝して下さる世界中の人々、特にインドと中国の友人たちに感謝の意を示された。最後にチベット内地で、この日を特別の日として祝しているであろうチベット人たちに対し、「武力の下に支配されている雪山チベットでは、喜び或は悲しみを表情に表すだけでもすぐに罰を与えられたり、逮捕されることもある。そのような状況の下で、内なる心の勇気と信念、誓願を堅く守りつつ人々が、今日は私の誕生日だと言うことを強く感じて下さっている。だから、私はあなた方に特別の感謝を示したい。大きな困難の下にありながら、自らの民族の誇りと忠愛の心を強く守りながら生き抜いておられることを賞賛し、うれしく思っている。」と述べられた。

7日付けTibet Times http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6276によれば、この日当局の厳戒態勢にも関わらずチベット内地では各地で法王の誕生日を祝うチベット人たちの姿が見られたという。特に、カム、タウとアムド、マチュでは大勢の人々が集まり大々的に祝われた。

208831_304315569664458_83767295_n左の写真はマチュで法王の誕生日を祝うために、馬に乗ったチベット人たちが丘の上に集まり、ルンタを空に撒き、焼香を行っているというもの。

a14c1fd4jw1dumucihrb0jラサでも雨の中、ジョカン前に普段よりも多くの人々が集まり焼香の煙が絶えず、ポタラやノルブリンカに花を捧げる人も大勢いたという。

003左は去年の法王誕生日にカム、タウの人々が家々から盛大な焼香の煙を上げたという写真。今年はいつもの丘は軍隊に囲まれ登る事ができなかったが、それでもニンツォ僧院前の仏塔傍に僧侶、俗人が大勢集まり、法王の写真を掲げ、祝賀会を開いたという。

なお、@kinbricksnowさんがツイッター上で@wenyunchaoさんの伝える中国語を要訳されているところによれば、「中国政府からダライ・ラマ誕生日に贈り物。チベット全域でネット、携帯ネット接続、携帯メールを遮断」したそうだ。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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