チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年6月16日
ンガバ:政府が提供した家の鍵を受け取らないと 3年の刑
ンガバの北にあるアンドゥ郷(ཨ་འདུས་)では今年4月半ばに、役人の表彰式に立ち会わされた村人たちが、「汚職役人を表彰するとは何事か!」と抗議の声を上げた。これに対し当局は待機させていた軍隊と武装警官隊を使って村人に襲いかからせた。100人ほどが負傷し、15~20人が拘束されるという事件があった。詳しくはブログ>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51741158.html
この地区ではその他、政府が住民の聖なる共有地を軍の駐屯地にしたり、政府の援助だと言って詐欺まがいの集合住宅開発が行われていた。
昨日、ダラムサラ・キルティ僧院リリースが明らかにしたところによれば、この時拘束されたチベット人の内2人に刑期が言い渡されたという。その罪状は何と、「政府が提供した家の鍵を受け取らなかった」からだという。
6月2日、ンガバ県人民法院はアンドゥ郷ギェルデ村のプルテン(ཕུལ་བསྟན་40)に「政府が提供した家の鍵の受け取りを拒否したとして」3年の刑期を言い渡した。彼には妻と4人の子供がいる。同じくギェルデ村のギュルコ(འགྱུར་ཁོ་37)には2年の刑。
この時拘束された者たちの多くはすでに解放されたが、ペギェーセンゲ村のペマは判決もでないまま未だ、ンガバで拘束されているという。
その他、同リリースは去年10月17日に拘束され、行方不明であったキルティ僧院僧侶ロプサン・プンツォ(བློ་བཟང་ཕུན་ཚོགས་29)が、バルカムの裁判所で最近8年の刑期、4年の政治的権利剥奪を言い渡されたと伝える。罪状不明。
また、5月27日にラサで焼身抗議を行ったンガバ出身のタルギェの父親は、息子の消息を知るべく、ラサに向かったが、結局、息子の生死も居所も知ることができず、ンガバに帰るしかなかったという。
参考:6月15日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6174
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)