チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年6月14日
ウーセル・ブログ「チベット人焼身に関するCCTVの釈明」/中国側発表貴重ビデオ付き
ウーセルさんは今月9日のブログでCCTV(中国中央電視台)が5月7日の午前2時過ぎに流した「チベット人焼身抗議に関する特集番組」についてコメントされている。中国官製メディアが制作したものなので、ダライ・ラマと亡命政府を非難するプロパガンダであることは明らかだ。しかし、映像の中には亡命側に伝えられないものも沢山あり、映像自体は貴重な資料と言える。中国では見る事ができないようだが、Youtubeにアップされた映像は外では見る事ができる。ウーセルさんのブログには言及されるだけでURLは紹介されていなかった。これを添付するので、是非現物をみて、真実はどこに有るのか自分で判断してほしい。
原文:http://woeser.middle-way.net/2012/06/cctv.html
翻訳:@yuntaitaiさん
◎チベット人焼身に関するCCTVの釈明
写真説明=1枚目と2枚目の写真はCCTV英語チャンネルが放送したこの特集番組の画像。3枚目はYouTubeにアップされた中国語版番組の画像。
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CCTV(中国中央電視台)は5月7日午前2時過ぎ、チベット人焼身抗議に関する中国語版と英語版の特集番組をたいそう神秘的に放送した。これは中国の官製メディアが当局の代弁者としてチベット人焼身を描いたもので、長さは41分あった。ネット仲間は「真夜中に放送……つまり一般の国民には見せないということか」とすぐさま疑問を投げかけた。翌日、CCTVは外国向けのチャンネルで、この番組をフランス語とスペイン語、アラビア語、ロシア語で放送した。しかし中国本土では受信できないため、中国国内には番組を見られた人はほとんどいないと言っていい。
中国インターネット電視台(http://www.cntv.cn/)はネット上でこの番組を流さなかった。だが3日後、YouTubeに中国語版と英語版の番組がアップされた。画面にはCCTVのロゴが入っておらず、CCTVが自らアップしたものと思われた。しかし誰もが知るように、中国でYouTubeへの接続は遮断されている。この番組は今のところ、中国国内の各動画サイトでは見つかっていない。
part 2 http://www.youtube.com/watch?v=6H1eQpGgxFs
part 3 http://www.youtube.com/watch?v=UKF5sTRzzBw&feature=relmfu
part 4 http://www.youtube.com/watch?v=lvN-gCYTkII中国語版 part 1 http://www.youtube.com/watch?v=3zcgwNYdjhA&feature=related他。
ここから分かるのは、番組が対外的なプロパガンダであり、中国語版も主に国外の華人に向けられているということだ。チベット研究者のエリオット・スパーリングは「チベット人の焼身事件は対外的なプロパガンダの戦線になっている」と話す。中国政府は2009年以降、焼身による決然とした抗議の増加を目の当たりにし、自分たちにとって有利でメンツが立つ釈明を世界に聞かせる必要があった。「ダライ集団と焼身暴力事件」という事実をねじ曲げた番組名から、この事はすぐに見て取れる。
CCTVは現時点で、中国国内の視聴者向けにはこの特番を放送していない。2008年春にチベット全土で抗議が爆発した後、CCTVはすぐに「ラサ略奪焼き討ち暴力事件の記録」という番組を製作した。5月の連休に合わせておごそかに放送、再放送し、DVDまで発売した。民族工作を退職した公務員の言葉を借りれば、この強大なプロパガンダ攻勢の生み出した効果は次のようなものだ。「まだ修復できた民族間の亀裂を徹底的に広げた。覆水盆に返らず、だ」
では、深い策略を持つ当局はどんな考えからチベット人焼身抗議の特番を国外で放送し、国内では放送しないのか?漢人を中心とする中国人がチベット情勢をより理解し、「現在はチベット族人民の歴史でこれまでにない発展と幸福の時期だ」という当局の宣伝に疑念を持たれないようにするためだろうか?これは理由の一つに違いない。しかしより大きな理由は、チベットに暮らす数百万人のチベット人、そして同様に当局から恐れられているウイグル人やモンゴル人などの民族を刺激することを心配したからに違いない。この特番はチベット人の焼身抗議者13人を取り上げただけだが、焼身抗議の映像と写真が初めて公にされ、焼身するチベット人の巨大な勇気を見せつけた。一方、CCTVのさまざまな釈明は穴だらけで、ただあざ笑われただけだった。
アムド地方のサンチュ(現在の甘粛省甘南チベット族自治州夏河県)から届いた情報によれば、「ダライ分裂集団」がチベット人の焼身抗議を計画しており、焼身者全員の人格に問題があったとするプロパガンダ番組が今年2月上旬に現地で放送されていた。僧院や村、学校から代表を出し、番組を鑑賞し、(焼身を)批判するよう現地の役人が求めたが、観衆の反発は大きかったという。実際、アムドは焼身抗議者の最も多いエリアで、31人に達している。番組の放送後、2月に6人、3月に11人、4月に2人が焼身抗議した。5月には、3人の子どもを持つ母親を含む3人のチベット人が焼身抗議している。このうち2人の焼身抗議はラサで起きた。最も重要な仏教の大祭サカダワの6日目のことだ。ラサで働いていたアムドの青年2人が、神聖なジョカンと圧迫を職務とするバルコル派出所の間で焼身抗議した。
サンチュなどを対象にしたプロパガンダ番組はテスト放送だった可能性がある。多くの場面が共通していたというから、CCTVの外国向けプロパガンダ番組のひな形だったはずだ。だが、CCTVの番組はネット仲間にこう論評されていた。「40分のCCTVプロパガンダ番組を見終わった。音声を消せば反政府ニュース番組に変わると思った。こんな諸刃の剣のプロパガンダ番組をつくった目的が分からない」。この番組を製作した目的ははっきりしている。その釈明がでたらめで卑劣だと証明するためだ。
2012年5月31日
(RFA特約評論)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)