チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年6月11日
カム、ニャロンのチベット人 拷問死
6月11日付けTibet Express チベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/8401-2012-06-11-05-55-59によれば、最近、カム、ニャロン(ཉག་རོང་カンゼ・チベット族自治州新龍県)出身のカルワン(36)が政治的チラシを張り出したとして拘束された。8日後、警察から家族の下に電話が入り、「カルワンの遺体を引き取れ」と告げられた。拷問死と思われる。
関係者が6月11日、Tibet Expressに伝えたところによれば、カルワンが拘束された日時は不明だが、先月中のことであり、彼が殺されて20日経つという。
彼はニャロン県ラロ郷出身で、父の名はゼガ。カルワンは様々な中国の新しい建築物の壁に「チベットには宗教の自由が必要だ」「チベットは独立すべきだ」「ダライ・ラマ法王をチベットにお招きすべきだ」と書かれたチラシを張り出したという。
彼はチラシを張り出した後、2日間、あるラマが仏教講義を行うという土地に出かけていた。2日後、自宅に戻り、食事を終わり家を出たところで突然警官隊に拘束された。理由を説明されることもなく県の拘置所に連行された。その2日後、警官が自宅に来て、家族を尋問し、脅した。しかし、彼の家族は遊牧民であり、何も分からないと答えた。
警官が家族に尋問した内容は「チラシを張り出した理由は何か?仲間は誰か?チラシを張り出すように仕向けたのは誰か?」であった。
カルワンが拘束された8日後にダルツェンドから警官が家族に電話を掛けて来た。「カルワンの遺体を引き取りに来い」というのだった。
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明らかにカルワンは尋問中の拷問により死亡したと思われる。警察が死亡原因を明かすことはないであろう。当局の誰も彼の死に対し責任を取らされるということもないであろう。
正当な裁判が行われないという以前に、尋問中に殺されても、これを訴えることもできないのがチベット(中国)だ。
チラシを張り出しただけで、死刑にされたに等しい。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)