チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年6月10日
焼身の情報を外部に伝えたとして懲役刑・裁判で被告が無実を主張するは想定外
6月8日付けRFA英語版及びチベット語版によれば、今年2月17日にアムド、テムチュン・ゾン(青海省海西モンゴル族チベット族自治州天峻県)センゲ郷、ボンダク僧院僧侶ダムチュ・サンポが焼身抗議を行い死亡した後、(詳しくは過去ブログhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51730483.html)当局は同僧院の僧侶9人をこの焼身に関係したとして拘束した。
その内の3人、コンチョック・ギャンツォ、シェラップ・サンポ、コンチョック・ダルギェは先に裁判に掛けられ、この内コンチョック・ギャンツォとシェラップ・サンポには、罪状不明であるが、1年半の刑期が言い渡されたことが判明している。残るコンチョック・ダルギェの刑期は依然不明である。しかし、彼は外国に焼身の情報を流したとされており、一番長い刑期を受けたはずだと思われている。
5月29日には残る6人も刑期を言い渡されるために法廷に連れ出された。現地からの報告によれば「裁判官が刑期を告げようとした時、突然僧ボンタク・ケドゥップが無実を訴え、また不当に100日以上も拘束されたことに抗議した」「彼はさらに、『もうこれ以上一日たりとも拘束されることを認めない』と主張した」という。
裁判官や役人たちは被告が声を上げ抗議したことに驚き、「この判決は上級裁判所に任せる」と宣言したという。
この反応に対し、報告者は「裁判が法律に従うものでなく、形だけのものであることを示している。被告が反論することは想定外であり、これに驚いた。また、上級裁判所に任すという時も、何の法律的根拠も示されなかった」とコメントした。
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参照:6月8日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/monk-06082012174225.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)