チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年6月6日
ラサの検問所でアムド出身僧侶 銃殺
チベット方面に向かう軍用トラックの列。ダルツェンドの手前で。
6月5日付けTibet Times http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6127によれば、
最近、ラサの検問所で軍人がアムド、テボ出身のチベット人僧侶に発砲し死亡させたという。
アムド、ケンロ(甘粛省甘南チベット族自治州)テボ出身の1人の僧侶がラサの検問所で何度も検問を受けた。彼はこれにうんざりし、「何の罪もない者を、こんなに何度も検問する理由は何なんだ?」と検問しようとする軍人に口答えした。
その軍人は「命令に従わないやつは銃殺するぞ!」と脅した。これに対し僧侶は「お前に勇気があるなら、この場で俺を殺すがいい」と答えた。とたんに軍人は僧侶を撃った。僧侶と一緒にいた2人がすぐに彼を病院に運び込んだ。しかし、銃弾は胸を貫通しており、僧侶は間もなく死亡したという。名前など僧侶の詳しい身元は未だ判明していない。
この情報を伝えたアムドのチベット人は、その他、最近ラサからアムドに強制送還された人々から聞いた話も報告している。
ある僧侶はラサに巡礼に来て数日もしないうちに拘束され、拘置所に送られた後、追い返されたという。「ジョカンとラモチェにしか行く事ができなかった。荷物をラサに置いたままだ。もう一度行くしかない」とその僧侶は言う。
ある年寄りは「ラサに着いたと同時に拘束され、拘置所に連行された。そこにはチベット人ばかり千人以上が拘置されていた。何で拘束されたのかとか聞かされることもなく、アムドに送還された。バスセンターや駅には大勢の保安要員がいて、アムドやカムから来た者たちはすぐに検問を受け、拘置所に送られ、何の説明もされずに送り返されている」と言う。
———————————————————————————
検問所で逆らったとして銃殺された、という話はこれまでにもアムドから何度か報告されている。
事件が公になったりすると、大概当局は「相手のチベット人が刃物などを振り回し襲いかかったので、やむを得ず発砲した」と発表したりする。
今回もこの軍人が訴えられるという事などはあり得ないであろう。
「チベット人は虫けらのように殺される」とチベット人が度々表現する。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)