チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年5月28日
<続報>ラサで2人のチベット人若者が焼身抗議 1人死亡
イギリスベースのFree Tibetが死亡したドルジェ・ツェテンの写真として発表したもの。焼身抗議を行ったジョカン前にて。
昨日の焼身について、その後徐々に事実と思われる情報が伝えられ始めた。それらをまとめて報告する。
RFAの英語版では最初「2人の僧侶が焼身」と伝え、日本の各メディアもこれを元にして「焼身したのは僧侶である」と伝えた。しかし、RFAもその後更新版を出し、その中では「2人の若者が焼身、内1人が死亡」としている。
中国公式メディアの新華社がラサ当局発表として報じるところによれば、「27日午後2時16分に、ラサのパルコルで四川省ンガバ出身のダルギェと甘粛省サンチュ(夏河)出身のトプギェ・ツェテンが焼身を図った。警備中の警官が2分後に火を消し、病院に運び込んだが、トプギェ・ツェテンは死亡した。ダルギェの容態は安定しており、話をすることもできる」という。
最後に温家宝の焼身に関するコメントを引用し、亡命政府とダライ・ラマ法王を「祖国分裂を企み、焼身を唆している」として非難している。
BBCやロイターもこの新華社報道を元にして記事を発表し、「チベット自治区の首都ラサで焼身が行われたのはこれが初めて」とそのことが強調されている。
追加写真(29日)ジョカンの前に走り出て保安要員に行くてを阻止され、消化剤を掛けられるドルジェ・ツェテンと思われる焼身者。
独自のソースから情報を得たと思われるTibet Timesは、2人の身元を「1人はアムド、サンチュ(ラプラン・タシキル)県ボラ郷ペルン村出身のドルジェ・ツェテン(རྡོ་རྗེ་ཚེ་བརྟན་)、19歳。もう1人はアムド、ンガバ県ソルマ村のダルギェ(དར་རྒྱས་)、25歳前後」とする。
VOAとTibet Timesによれば、2人とも最近ラサに住み始め、パルコル近くの「ニマ・リン」という食堂で働いていたという。
Tibet Timesによれば「2人はパルコルで火を付けた後、ジョカンの正面まで走った」という。また「2人は炎に包まれながらも何かスローガンを叫んでいた」と目撃者は証言するが、その内容は明らかになっていない。これまでの焼身抗議者のほぼすべてが「ダライ・ラマ法王のチベット帰還」と「チベットの自由」を求めるスローガンを叫んでいることから、2人もこのような趣旨のスローガンを叫んだと思われている。
死亡したトプギェ・ツェテン(或はドルジェ・ツェテン)の故郷であるボラでは3月20日にボラ僧院僧侶約100名による抗議デモが発生し、多くの僧侶が逮捕されている。>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51736267.html
ダルギェの故郷であるンガバはご存知のように、焼身抗議がもっとも多く発生しているところである。
この2人が元僧侶であった可能性も考えられるが、まだそのような情報は入っていない。
ツェテンの死亡により、これまでに内地で焼身抗議を行ったチベット人37名の内、死亡した人の数は28名となった。
追記:イギリスベースのチベット支援団体Free Tibetによれば、27日午後1時頃2人はジョカン傍のタクシャン・ホテルに部屋を取り、そこで焼身の準備をした後、2時過ぎにそこを出て、ジョカンの正面に向かいながら焼身したという。
また、彼ら2人が働いていた飲食店のオーナーと従業員数名が当局により拘束されたという。
VOTによれば、彼の故郷ボラでは死亡の報を受け、彼の家族の下にボラ僧院僧侶が多数駆けつけ法要を行っているという。地元の警官や武装警官も出動し、家族に事件について口外しないように警告し、人々に尋問を行っているともいう。
Tibet Times に目撃者が語るところによれば、「炎に包まれながら1人はジョカン前のタルシン(タルチョの柱)の傍まで走り倒れた。もう1人は10歩程歩いて倒れた」という。http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6089
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参照:28日更新RFA英語版http://www.china.org.cn/china/2012-05/28/content_25494291.htm
Tibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6085
VOA英語版http://www.voanews.com/tibetan-english/news/Two-Tibetans–carry-out-self-immolation-protests-in-front-of-Tibets-holiest-temple-in-Lhasa-Tibet-capital-154865075.html
Tibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/8315-2012-05-27-13-47-52
BBChttp://www.bbc.co.uk/news/world-asia-18231550
ロイターhttp://www.reuters.com/article/2012/05/28/us-china-tibet-idUSBRE84R01M20120528
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)