チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年5月2日
アムドで遊牧民の土地が強制収用され、中国人移民に渡される
カワスンド付近の黄河上流(写真グーグルアースより)
アムドの5つの遊牧民村の土地が、中国人移民のために強制収用される。
5月1日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/land-05012012200310.htmlより。
現地からの報告によれば、「4月25日、中国政府役人は、青海省海南チベット族自治州カワスンド(ゲパスンド、バ・ゾン、同徳)県の5つの遊牧民村の住民代表を集め、会議を行った」
「会議の結果、今年中にセトン、ダクマル、セル、マチュ、ゲカル村の60%の土地と54%の家畜の放棄が言い渡された」。
さらに、以後政府が収用した土地の中に家畜を放つことを禁止した。
村人たちは家畜の数を減らすために家畜を屠殺場に送るようにと言われた。
「会議中、5つの村の住民代表は一様に、この土地を収用するという政府の決定に反対した」とカワスンドのチベット人は話す。
強制的引き渡し
それぞれの地区に帰った役人たちはセトン、ダクマル、セルの住民対し、「強制的」にすべての土地を明け渡すよう命令したという。
「地元の人の話によれば、当局が取り上げた土地は3万人以上の中国人に渡され、新しい中国人町が作られるそうだ」と1人の地元チベット人が報告する。
「当局はこの地区に新たに2つのダムを計画しており、これにより10万人の移民が来るであろうと予測されている」と自治区のあるチベット人は言う。
代々受け継がれてきた遊牧チベット人の牧草地が中国人の移民のために強制収用されるということは最近益々、頻繁になっている。
「この政策はチベット人遊牧民の伝統的生活様式を破壊し、生活の糧を奪うものだ。チベット人の独特な文化的アイデンティティーを破壊するものでもある」とロンドンのFree Tibetはコメントする。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)