チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年5月15日
東チベットのある町である旅行者が焼身に付いて聞いた話
最近「根強い抵抗運動の続く東チベットのある町」に入ったある旅行者が、現地のチベット人と焼身について会話した内容を伝えて下さった。貴重な証言と思われるので、以下、これを報告する。
絵はウーセルさんのブログより。
質問:なぜ焼身?
僧・俗「役人は『自由に意見を』と言うが、何か言えば逮捕されるだけだ。みんなでデモするか?全員撃たれて殺されるだけだ。パレスチナを見習うか?駄目。俺達には他人を傷つけてはいけないって教えがある。チベット人にできるのは自分に火をつけることぐらいだな」質問:焼身に否定的な意見もあるが。
僧・俗「自分の苦しみから逃れるために自殺してるんじゃない。600万チベ人のためにやってるんだ」「外国人とは受けてきた教育、宗教意識が違うから理解しにくいんだろう。生きるとか死ぬとかは要するに花が咲いて枯れて、また咲くようなものなんだ」質問:なぜ、カムやアムドで多いのか?
僧・俗「民族意識が強いからだ。俺達の意識はラサよりもずっとスゴイんだ」「別にこの数年の政策や衝突の話だけじゃなく、何十年も積もってきたんだ。チベ人はずっと圧力を受けてきて、08年に爆発して今も続いてる。俺達はチベ文化を守らなければいけない」質問:焼身を肯定するなら、自分がやる可能性も?
俗人「自分が一番に考えているのは家族を守ること。だから自分は焼身できないだろう。でも焼身抗議者は600万チベット人のことを考えて行動している。思想の偉大さが違うってことかな。だからこそ彼らは本当の英雄なんだ」…みたいな話をコソコソと。現地の人はたくましく生きてました。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)