チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年4月22日
「口しか使わず、耳を持たない中国」と法王・カンゼの田舎で250人拘束、10人重傷
中国当局はチベット人たちが地域の教育や福祉を向上させよう、環境を守ろうと、自発的に学校や福祉協会、環境保護団体等を作ると、これを邪魔し、強制的に閉鎖し、関係者を逮捕する。
最近でも相次いで、教育機関が全くない田舎にチベット人たちが作った学校が閉鎖され、責任者や教師が逮捕されている。今年の冬、雪害により大きな被害に遭ったジェクンド北部やザチュカを援助しようとした僧院や個人に対し当局は「援助することは違法である」と訳の分からぬことをいい、これを妨害している。
中国政府はチベット人たちが団結し、助け合うことを喜ばず、すべて政治的意味を持つと見なすのだ。分裂工作を積極的に行っているのはチベット人ではなく中国当局であることが分かる。また、この分裂挑発行為には常に暴力が伴う。
最近、法王はBBCのインタビューに答え「対話は全く失敗に終わった」とし、「中国の指導者たちは口しか使わず、耳を持たない。他の人の意見を全く聞こうとしない」と言われた。問題解決方法として話合うということは全くなく、この21世紀に入っても、口で命令し、銃とこん棒を持つ手を使う事しか知らないのが中国だ。
ダラムサラで行われたこのインタビューの一部をyoutubeで見る事ができる。題は「中国のチベット弾圧 文革以来最悪」
昨日、内地から伝えられた報告によれば、カンゼ州の田舎に武装警官隊が乗り込み、地域の福祉協会が暴力的に潰された。250人が拘束され、10人以上が負傷し病院に担ぎ込まれたという。
21日付けTibet Expresshttp://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/8042-2012-04-21-10-53-48その他によれば:
今月14日、カム、カンゼ州ダ・テルマ遊牧地区タシレク村にカンゼ公安局の責任者が300人程の武装警官隊を引き連れ現れた。そして、この地区で2008年に村々が助け合い、様々な問題を解決するために結成された「ダ地区友好協会」が政治的活動を行っているとしてこの会の解体を命令した。されに、この会の会長であるドゥントク以下250人を連行した。この際、村人たちはこれに抗議の声を上げ、拘束を妨げようとした。
これを見た武装警官隊は、すぐに集まっていた村人たちに殴りかかった。この暴行により10人が重傷を負い病院に担ぎ込まれた。病院に担ぎ込まれたチベット人の名前は:キャチェン、ギェルツェン、キャツェ、チュボ、スリン、キャト、キャリ、その他3名の名は不明。
翌日(15日)、地域の村人2000人以上がこの当局のやり方に抗議するためのデモを行い、拘束された者たちの解放を要求した。この結果、33人を残し他の人たちは解放された。
この事件の後、地区の情報網は遮断され、現地と連絡できず、現在の状況は不明という。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)