チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年4月20日
上ンガバで汚職役人を非難した村人たちが暴行を受け逮捕
上ンガバ、アンドゥ( 安斗)郷周辺の民家(グーグルアースより)
17日付、ダラムサラ・キルティ僧院リリースによれば:
今月14日、アムド、ンガバ州ンガバ県上ンガバ・アンドゥ郷(རྔ་སྟོད་ཨ་འདུས་)で集会が開けれ、2人の役人が表彰された。これに対し、この集会に招集されていた地元のチベット人たちは「彼らは汚職役人だ!」と非難の声を上げた。この抗議を見た役人たちは近くに待機させていた、軍隊と武装警官隊を呼び、チベット人たちに襲いかからせた。隊の暴力により100人程のチベット人が負傷し、病院に運び込まれる者も続出。さらに15~20人が逮捕されたという。
アンドゥ郷には地区の村々が共同管理する「オメェル(འོ་མའི་ལུས་ミルクの体)」と呼ばれる美しい草原があった。そこはマニ法要(オンマニペメフンという観音の真言をみんなで唱える法要)やニュンネ(断食行)が行われ、ラマやゲシェが法話を行い、祭り事を行う場所であった。2008年以降、中国当局はこの土地を「養老院」を建てるからと言って、強制取得した。この時、地元のチベット人たちは「政府の話は口実に過ぎない。信じられない」として強く反対しが、政府は聞く耳を持たなかった。その後、そこには大きな軍の駐屯地が出来上がり、大勢の軍隊と武装警官隊が駐屯することになった。
その周辺には政府の援助だと言って、小さな集合住宅が沢山建てられた。この家にはただで移住できるというので、幾つかの家族が移り住んだりしたという。しかし、最近、役人たちは「これらの家は8万元する。その内7万元は政府の援助だが、1万元は入居者が払うのだ」と言い始めた。話が違うと言って、争いが起っていた。
その日、表彰された2人はこの「オメェル」を台無しにした張本人であり、かつ「この土地収得、住宅建設に関わり、政府の金を横領した」と、前から噂されていた役人であった。
———————————————————————————————–
横領した役人に対しても、これを告発したら殴られ、逮捕されるということだ。
追記:19日付けのダラムサラ・キルティ僧院リリースによれば、病院に運び込まれた者たちは、治療を拒否されたという。
その内、ロッポン・キャプは強く頭を殴られ脳内出血が疑われて、重体。他2人が手足を一本ずつ骨折。他にも重傷者がいるというが詳細不明。
現在アンドゥ地区には部隊が押し掛け、移動も難しい状況という。
アムド、アンドゥ郷は一昨日紹介したビデオに写っている焼身の僧ロプサン・ジャミヤンの出身地でもある。
参考:17日付けTibet Times http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=5895
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)