チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年4月3日
アムド、カンツァで中学生がデモ 3人に3年の刑
写真は2010年10月19日、レゴンにおける学生デモ(RFAより)。
アムド、青海湖の北でチベットの自由を求め、チベット語擁護を訴え、焼身抗議者への連帯を示した中学校生徒たちが逮捕され、3人に懲役刑。校長は免職となり、他の生徒も放校等の処分を受ける。
4月1日付けTIbet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/7890-2012-04-01-13-02-25
及び2日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/students-04022012144339.htmlによれば、
2月26日(*1)アムド、ツォジャン、カンツァ(ཨ་མདོ་མཚོ་སྔོན་ཞིང་ཆེན་མཚོ་བྱང་ཁུལ་རྐང་ཚ་རྫོང་ 青海省海北チベット族自治州剛察県)の民族中学校のチベット人生徒17人が県庁舎前で中国政府のチベット弾圧政策に抗議するデモを行った。
現地からの報告を受けた、南インド、モンゴットキャンプのワンデン・ギェルが伝えるところによれば、抗議の内容は「チベットの自由、ダライ・ラマ法王の帰還、チベット語擁護」を求めるものであった。また、彼らは「600万チベット人のために焼身抗議を行った者たちへの、連帯を示すために立ち上がった」と言う。
武装警官隊が出動し、生徒たちはその場で撲打の末、全員逮捕された。
その内、3人には既に3年の懲役刑が確定し、5人は放校。その他7、8人が今も拘束され、判決を待つ状態という。また、この件に関わったとして、この民族中学校の校長であるユンドゥン・ギェルも免職処分を受けた。
デモを行い、逮捕された生徒たちは全員、金持ちや地位のある親を持つ子供たちではなく慎ましい家庭の子供たちだという。
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*1:Tibet Expressは事件が起った日付を2月26日と報じるが、RFAは3月26日と報じている。
Tibet Express には事件を伝えたワンデン・ギェルが「事件の後、地域の電話が切断されていたので、連絡が入るのが遅れた」とコメントしている。また、3月26日に逮捕され、早くも4月初めに判決が出されたとは考えにくい。ということで、事件が起った日時をTibet Expressに従い2月26日とした。
アムドでは2010年の秋から中学校の生徒を中心に「チベット語擁護」を訴えるデモが連続発生している。これはその頃、青海省の教育庁がチベット人居住区の学校において、教育メディアをそれまでのチベット語から中国語に変更するという方針を発表し、これに生徒たちが反発したからだった。アムドの多くの町で数千人規模の抗議デモが行われた。
この抗議デモを受け、教育庁は「この改革は数年をかけ序々に行う」と発表した。しかし、ある地区においては、今年冬休みが終わった後、学校の教科書が突然中国語に変わっていた。これを見て、3月中旬、再びアムド各地で生徒たちがこの教育政策に抗議するというデモが発生している。
チベット全域で2008年以降、中国のチベット統治に対する抵抗運動が盛り上がり、チベット人としてのアイデンティティー自覚、愛国心高揚運動が起っている。特にアムドではこの時期に中国政府の中国語強要政策が発表されたことで「チベット人としてチベット語を守ろう」という運動が学生の間に広まっている。もちろん、今年の場合には「相次ぐ焼身抗議への連帯を示す」という意味合いも加味されている。
それにしても、中学校(中国の中学校は日本の中学と高校を合わせたもの)生徒にデモをしたとして3年の懲役刑とは酷すぎる。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)