チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年3月22日

アムドで連続する抗議デモ

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<映像:15日、バ・ゾン(ゲパスンド)で行われたシンティ僧院僧侶による平和的抗議デモ>

このところ、中国政府のチベット政策に対するチベット人の抗議デモの中心がカムからアムドに移りつつあるようだ。カム地方の主だった町はほぼすべてデモを行い、その結果多くの逮捕者がでて、戒厳令下状態。そのため新たな大規模なデモは起こしにくいかと思われる。

アムドのデモは大規模なものが多いが、そこには似通ったパターンがある。

まず僧侶たちがチベット国旗や法王の写真を掲げデモを始める。スローガンを叫びながら庁舎に向かい行進する。それを途中でラマや俗人の長老が説得し、僧侶たちは僧院に戻る。しかし、その後当局は部隊を僧院に送り込み、デモに参加した僧侶たちを拘束する。それを知った、一般のチベット人たちが僧侶の開放を求め大規模なデモを行う。アムドの場合はこれにしばしば中学校の生徒たちも加わり、「チベット語擁護を!」と叫ばれるということも特徴の一つだ。

要求が入れられ、拘束されていた僧侶たちが一旦解放されることもある。されない場合はデモが続き、最悪な場合は先に伝えたバゾンのケースのように爆発物が投げ込まれ死傷者が出るという事態に至る場合もある。一旦解放された僧侶たちもその後、序々に逮捕されるということもある。

こうして見ると焼身も抗議デモも僧侶たちが火付け役をしていると見える。が、本当の火付け役は、ベースとしてチベットを中国が侵略したことと、何十年に渡る残忍な宗教中心の弾圧。その上に94年から始まったダライ・ラマ法王非難を強要する愛国再教育とか、遊牧民強制移住、漢語強要等々のチベット人締め付け政策であることは言うまでもない。

<ソク・ゾンで大規模抗議デモ>

P1030799_copyツァン僧院(写真は3枚ともTibet Timesより)

18日早朝、アムド、マロ、ソク・ゾン(青海省黄南チベット族自治州河南モンゴル族自治県)ソクウォ(河南)の中心街でツァン僧院僧侶15人とアリ村の俗人2人がまず「ダライ・ラマ法王をお迎えしよう!チベットには自由が必要だ!」とスローガンを叫びながら平和的行進を始めた。これを見た周りのチベット人もこの行進に参加し始めその数はふくれあがった。

B行進が始まり1時間ほどして武装警官隊が駆けつけデモを先導していた17人を拘束した。集まった群衆は警察署に詰めかけ、彼らを解放するよう要求した。その数は2000人ほどであったという。デモ隊の怒りと興奮は募り、警察署の門を壊すほどになった。

一日中群衆は警察署の前から去らず、声を上げ続けた。ついに午後5時頃、先に拘束された僧侶たちは解放された。もっとも、彼らは尋問を受け名前はその他の情報を記録されたので、今後逮捕される可能性は否定できないと思われている。

その後、ツァン僧院からトラック2台に分乗した80人の僧侶が到着し、デモを行おうとしたが、大勢の部隊がこれを制止し、抗議デモは行えなかったという。

Aその日、普通午後5時に終わる市内の学校も、すべて8時半まで生徒を拘束し続けたという。

ソクゾンに向かい多くの軍のトラックが向かっており、緊張が高まっている。

参照;19日付Tibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=5754

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<サンチュで僧侶100人が抗議デモ>

20日、アムド、ケンロ、サンチュ(甘粛省甘南チベット族自治州夏河県)ボラ僧院の僧侶たちがボラ郷庁舎の前で抗議デモを行った。

20日正午頃、ボラ僧院僧侶100人以上が、手にチベットの国旗を持ち、法王の写真を掲げて「チベットに人権と宗教の自由を!言語平等、民族平等!ダライ・ラマ法王の帰還を!」等のスローガンを叫びながら僧院から郷庁舎に向かって平和的行進を行った。

大勢の武装警官隊も直ちに出動。これを知って、地域の長老たちが僧侶たちを説得し、僧侶たちは僧院に引き返した。

しかし、その後部隊はすぐに僧院を包囲し、僧侶たちを拘束し始めた。夕方には50人の僧侶が連行された。次の日の朝50人は解放されたが再び10数人が拘束され尋問を受けた。

参照:22日付Tibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/7788-2012-03-22-03-42-37

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<ルチュで障害者が焼身抗議前に拘束>

昨日もセルタで同様のケースを報告したが、昨日アムド、ケンロ、ルチュ(甘粛省甘南チベット族自治州碌曲県)でも1人のチベット人が、焼身前に拘束されたという。

ツェコというそのチベット人は身体障害者だった。アラ郷の街中で彼は身体に灯油を被り、灯油を飲み火を着けようとしたが、その前に警官隊に拘束されたという。

地域では最近当局が「焼身抗議者の情報を事前に当局に通報した者には5000元の報奨金を与える」と公表した。地元のチベット人たちは彼のケースも通報によって察知され拘束されたのではないかと噂さえている。

参照:21日付RFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/attempt-03212012193950.html

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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