チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年3月2日
山狩りで銃殺された2人の兄弟の母親も撃たれ、その腕は切断された
写真は2月9日にダンゴで山狩りにより銃殺されたイェシェ・サムドゥップと僧イェシェ・リクセル。
カム、ダンゴでは、中国の旧正月である1月23日に大規模な抗議デモが発生し、デモ参加者に向かって当局が無差別発砲したことにより大勢の死傷者が出た。負傷者の多くは逮捕を怖れ山に逃げ込んだ。そんな負傷者の内、2人の兄弟が2月9日に山狩りに来た保安部隊により銃殺されたということはすでにお伝えした>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-02.html?p=2#20120210
2月20日付Tibet Express チベット語版http://p.tl/0TKIによれば、殺されたこの兄弟イェシェ・リクセル(40)とイェシェ・サムドゥップ(38)の母親や兄弟、その子供たちも拘束されたという。
銃殺された、兄弟2人の遺体も家族には引き渡されず、当局によりすぐに火葬された。
2人が山で銃殺された同じ9日に、警官隊が2人の兄弟であるユンテン・サンポの家に押し掛け、70歳程である彼らの母親サンラとユンテン・サンポの幼い子供、親がいないと言うのでユンテンが面倒を見ていた14歳の女の子ラキ・ドルマとヤンキを連行して行った。この際、警官たちは暴力を振るったので、母親や子供たちは負傷したという。これを知って、友人たちは警察に行き、彼らに治療を受けさせるために解放してくれるよう懇願したが、受け入れられなかったという。
さらに17日にはユンテン・サンポが逮捕されたが、その際激しい暴力を受けたと言われ、ダンゴの人々は彼は死んだに違いないと噂している。
殺されたイェシェ・サムドゥップには妻と4人の子供がいたが、彼らがどうなったかについては報告が入っていないので不明である。
以上が2月20日時点で分っていたことであるが、昨日(3月1日)のVOTが伝えるところ(チベット語放送と中文記事http://p.tl/DflT)によれば、母親のヤンキは拘束された時、腕を撃たれていた。さらにその後直ちに病院で治療を受ける事が許されなかったのか、最近、その被弾した腕を切断する手術を受けたという。
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中国は映画等でしばしば日本人を「鬼」と表現するが、自分たちが今どれほどの「鬼」であるかに気付いているのであろうか?
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)