チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年2月22日
ダラムサラのロサ(チベット新年)
今日はチベット暦のお正月である。朝、ツクラカンで会った友人に「ロサ・タシデレ!(新年おめでとう)」と言うと、微笑みと共に「タシデレ・ヨマレ(おめでたくないよ)」と返って来た。20人以上も焼身抗議者がでれば、「おめでたくない」のは当たり前。
ダライ・ラマ法王は毎年恒例の新年早朝法要を行うために早朝7時、まだ薄暗いうちからツクラカンの屋上に登られた。政府、議会関係者が参加し、ナムギェル僧院僧侶たちと共に1時間半ほど、インドに亡命される前から恒例の法要を行われた。
屋上での儀式、法要が終った後、法王はツクラカン本堂に入られ、ゲスト謁見やゲシェ・ラランパの討論監督等を行われた。
本堂から出られ、通路傍に控えていた最近来たばかりのチベット人たちに向かって微笑み掛け、挨拶される法王。
この僧侶はヒマラヤを越え最近ダラムサラに到着したばかり。本土では政治犯として投獄されていたこともある。法王を初めて目の当たりにし、涙ぐむ。
この後、亡命チベット議会主催で夕方までのハンガーストライキが行われる。焼身抗議者たちの写真を前にチベットの国歌を歌う、議会議長、副議長、大臣等。
チベットでも、ラサやカムを中心に各地で今年のロサを祝はないという動きが広まっている。これに対し当局はロサを祝うよう強制している。ラサでは政府役人や一般チベット人に対し、ロサの踊りや歌の会を催すことを命令し、従わないものを罰すると脅している。最近拘束されていた、インド帰りの巡礼者の内、年寄りだけをロサの期間のみロサを祝わせるために家に帰した。ロサが終れば、また拘束される。ここでも映る西蔵テレビでは数日前から「共産党のお陰で、チベット人が如何に楽しそうに、ロサを送ることができているか」という番組ばかりを流している。
カムのカンゼその他の地域ではロサを祝わせるために1家族当たり500元、1人当たり200元を与えるというのもある。もっとも、この奨励金を受け取る小心なカム人はほとんどいないと言われている。
Tibet Netによれば、シガツェ地区ナムリン県のホディン僧院には当局の工作チームが来て、ロサには僧院に中国国旗を掲げるよう要求したという。僧侶たちは「僧院は政治とは関係ない。持って来るなら仏教の旗をもってこい。そんな中国国旗など、決して掲げない」と答えた。すぐに僧侶5人がその場で逮捕され、強制的に中国国旗が掲げられたという。
夕方5時からはキャンドル・ライト・ヴィジルが行われる。
今日は日本はじめ世界各地でチベット人と支援者によるハンストが行われている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)