チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年2月9日
8日ンガバで更に新たな焼身抗議/ダラムサラのヴィジル
ダラムサラでは今日(8日)午後3時からツクラカンで焼身抗議死亡者と最近のデモ弾圧発砲の犠牲者への追悼法要が行われた。その後引き続き本土の人々、特に焼身抗議者への連帯と中国政府のチベット弾圧に対する抗議の意味を込めたキャンドル・ライト・ヴィジルが行われた。これは亡命政府が世界中に要請した一斉行動の一環であった。日本でも護国寺でヴィジルが行われた。
法要やヴィジルの前に行われた首相センゲ氏のスピーチを紹介する前に、ヴィジルから帰った後にダラムサラのキルティ僧院からメールで知らされた悲しい新たな焼身抗議の報告をお知らせする。
ンガバで8日、現地時間午後6時半頃、僧侶と思われるチベット人が1人焼身した。場所はンガバ第2小学校前の国道。目撃者によれば、そのチベット人は炎に包まれながら何かスローガンを叫んでいたというが、何を叫んだのかはっきりしない。すぐに近くにいた保安部隊が駆けつけそのチベット人を連れ去ったという。生死、氏名、出身地等はまだ分っていない。
近くにいた2人の僧侶も拘束されたと報告されている。
RFA英語版http://p.tl/Np2bその他に記事も出ている。
北京時間午後6時半というと日本時間の午後7時半、インド時間の午後4時頃である。ダラムサラではそのころちょうど法要の最中であったし、おそらく日本でも同様と思われる。一方で、死者を追悼し、もうこのようなことが起こらないようにと祈っている最中にまたしても新たな焼身が起こった。中国の弾圧をなんとか止めない限り、祈りだけでは焼身を止める事はできないということだ。原因と条件が揃えば、その結果の生起を止める事ができない。
法要が終った後、数千人の参加者は前の広場に集まった。まず、犠牲者への黙祷を捧げ、「ツェメユンテン(真理の言葉)」を3回唱えた。首相初め大臣たちも黒いマスクをする。
「焼身抗議者は『数』ではない、『人』だ。母や父を持ち、兄弟、親戚がいる。もしも家族の誰かが焼身したとすれば、その家族の悲しみ、苦しみはどれほどのものか!『数』ではない『命ある人』だ」とまず、焼身者の苦しみとその家族の苦しみを想像せよと語る。
「何百台もの軍隊の車両が自動小銃を持った大勢の軍人を乗せ、チベットに向かっている。我々はさらに多くのチベット人たちが不幸な経験を強いられるのではないかと危惧する」
「中国政府がチベット人たちに対し、本当に悲劇的な何かを準備しているのではないかと感じる。だから今、国際社会が介入し、チベットとチベット人への支持を表明することが緊急に求められるのだ」
「チベットにいるチベット人たちが中国の占領と弾圧政策により、自らの命を投げ出しているという現実は受け入れ難いことである」
「我々はアメリカやヨーロッパその他の国々が(チベットの現状を憂慮する)声明を発表してくれたことを心より感謝する。しかし、我々はもっと具体的な行動を求めたい。チベットに調査団を送り、現状を調査してほしい。軍隊増強について、チベット人の死と拷問について、弾圧の原因について、どうしてチベット人たちが焼身抗議を行っているのかについてだ」と述べ、各国政府に調査団を送ってほしいと要請すると同時にメディアに対し、さらに努力し現地に入ってほしいとも要請した。
「もしも中国政府がチベット問題は暴力と恫喝により終らすことができると考えているとすれば、それは間違いだ。そうはならない。チベット人スピリットは強いからだ。チベット人のスピリットはチベットに自由がもたらされるまで、ダライ・ラマ法王がチベットにお帰りになる日まで強くあり続けるであろう」
「今日、こうしてダラムサラに集まりながらも、我々は世界中の人々が今日同様のヴィジルに参加して下さっていることを知り、これを誇りに思う。アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、東ヨーロッパの国々、南アフリカ、南アメリカ、アジアの国々で何百、何千というチベット人とサポーターが集まり、本土チベット人への連帯を示し、命を犠牲にした人々への祈りを捧げた。
「我々は決してあなたたちの叫びを無駄にしない。我々は常に犠牲者に寄り添い、人知れず死に行かせはしない」
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)