チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年1月27日

ザムタン、タウ、ペマ、ラギャ、ラサ…各地で次々事件が起こる

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AkJ9c14CMAAuB87カンゼ僧院(微博より)

今週、チベットは東部を中心に08年以来もっとも緊張した状況となっている。この背景は08年以来益々強化された当局の僧院を中心としたチベット人に対する弾圧の下で、ンガバ・キルティ僧院の僧侶たちが先例を示し、各地に広がった最終的非暴力抵抗手段である焼身抗議という勇敢な行為と死の重みがある。この死に報いよう、無駄にしてはならないという強い思いが地域の人々の心に広がった。こうして、今回中国の旧正月であり、またこの地域のチベット人の正月でもあった23日には、これまでに焼身抗議者が出たンガバ、ゴロ、カンゼの各地に「チベットの自由、ダライ・ラマ法王帰還」を求め、当局が正月を祝うことを強要することに反発し「正月を祝うまい」と訴えるチラシが張り出された。さらに「新たな焼身抗議を予告」するチラシもばらまかれ、これと同時に各地で中国政府の弾圧統治に対する抗議デモが起こった。

もちろん、これだけではこれほどの大きな衝突がおこることもなかったであろう。何よりも平和的デモに対して当局が無差別発砲を行い、死者が出たことが事態を急速に悪化させたと言える。中国当局は常に先に挑発し、事が起これば火に油を注ぐような対応しかできない。もちろん、カンパは発砲などで怖じ気づくような人たちではないことも関係する。

今日も新たに各地から事件の報告が入っている。あまりに多いのでそれぞれを簡単にお知らせするしかない。ダンゴ、セルタからは続報が入らない状態が続いているが、RFAはその26日付けチベット語版でhttp://p.tl/2gmOセルタにおける当局の発砲により死亡したチベット人の数を6人とし、負傷者数を60人以上と記している。

<ザムタン/འཛམ་ཐང་/壤塘>
昨日(日本時間では今朝)速報としてお伝えした、ンガバ、ザムタン県バルマ郷の衝突についての続報は今のところ伝えられていない。ただ、部隊の発砲により死亡したチベット人の氏名が判明した。今日付けTibet Times http://p.tl/buyMによれば、彼の名はウゲン(ཨོ་རྒྱན་20)、バルマ郷シュダ村プタル家བར་མ་ཞང་ཤོས་མདའ་སྡེ་བའི་སྤོས་ཐར་ཚང་の20歳の息子という。彼はこの衝突の原因となったチラシを撒いたタルパの同級生であった。現在、彼の遺体が家族の下にあるかどうかは不明という。

psu写真左はチラシを撒い逮捕されたタルパ(ダラムサラ・キルティ僧院より)

と、書いた後で今VOT放送が続報を伝えた。当局が発砲したのはタルパ(ཐར་པ་)が逮捕された後、彼の解放を要求するために付近のチベット人たちが郷の警察署に押し掛けた時であったという。また、被弾し死亡したチベット人は他にもう1人いると報告された。もう1人の氏名はまだ分っていない。

ダラムサラ・キルティ僧院によれば、ザムタンでは23日にもズメ・ナダ郷འཛུ་སྨད་ན་མདའ་ཞང་で1000人程のチベット人がキャンドル・ライト・ビジルを行った。最後の集会ではこれまで焼身抗議を行った勇者たちの名前が読み上げられたという。

追加写真(2月13日):銃殺されたウゲンの遺体(Tibet Timesより)と在りし日(RFAより)
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<タウ/རྟའུ་/道孚>
今日付けTibet Express http://p.tl/BFGlによれば、23日にダンゴで大規模な抗議デモと発砲事件が起こったのを受け、中国は多量の補強部隊を成都から送り込んだ。成都とダンゴの間にタウがある。ダンゴに向かう完全武装した車両の列を見て、タウのチベット人たちはそうはさせまいと道路を40台の車、大きな石、大きな木で塞いだ。道を塞がれた部隊の隊員たちはこの犯人を探そうと、車から下り街角を固めた。これを見て、チベット人たちは彼らに投石し、ついでに警察車両や警察署にも投石したという。

もちろん、このせいで、タウだけでなく近くのミニャックམི་ཉག་も非常に緊張した状態となっているというが、その後どうなったかはまだ報告が入っていない。

<ペマ/པདྨ་/班瑪>
ゴロ、ペマ県ではソバ・リンポチェの焼身抗議死亡の後、毎日のように抗議デモが起こり、逮捕者が続出している。今日のTibet Times http://p.tl/iWirその他によれば、昨日(26日)はバンル・ユルツォདབང་རུས་ཡུལ་ཚོ་の住民が抗議行進を行い、掲げてあった中国国旗を降ろし、火を付け、代わりに仏教の旗とダライ・ラマ法王の写真を掲げたという。直ちに、16台の保安部隊が現場に到着し、抗議者を打ち据え大勢を逮捕したというが、逮捕者の名前等は分っていない。

また、24日にペマの街中で抗議を行った6人の内、逮捕されたものたちは全て酷い拷問を受けた。その内ツェテンというチベット人の状態は危険な状態であるという。

26日にはペマの街中で1人の僧侶が焼身抗議を行おうと、全身にガソリンを浴び、街の通りに出たが、直ちに部隊に発見され、火を放つ前に逮捕されてしまったという。

<ラギャ/རྭ་རྒྱ་/拉加>
ゴロのラギャ僧院では先のガンデン・ガムチュ(灯明祭)の折、僧院の屋上に大きなチベット国旗と法王の写真が掲げられた。これを契機に僧院には大勢の保安部隊が常住し、「愛国再教育」が強化されていた。今日付けTibet Times http://p.tl/3Inl によれば、25日に僧院内と街に「チベットの自由と法王帰還」を訴えるチラシがばらまかれた。これを受け当局は僧院に対し、犯人を引き渡さない限り、僧院を完全に閉鎖すると脅しているという。

AkJH13XCIAAPfc7ラサ・パルコル(微博より)

<ラサ/ལྷ་ས་/拉薩>
ラサではダンゴでの事件が起こった後、警備が特に強化され、チベット人は至る所で身体検査を受けなければならない状態であるという。特に僧衣を着て歩く僧侶は酷い嫌がらせを受けると報告されている。

そんな厳戒態勢の中で、同じく今日のTibet Times http://p.tl/n8C2によれば、25日午後5時頃パルコルで1人のゴロ出身の僧侶ナムカ・ギェルツェン(ནམ་མཁའ་རྒྱལ་མཚན་25)が「チベットに自由を、ダライ・ラマ法王の帰還を」等と書かれたチラシをばらまいた。彼はすぐに警官に逮捕されたという。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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