チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年1月25日

セルタ、ダンゴ、ンガバの状況

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tibet-yunden-305写真左は23日ダンゴでデモの最中、銃殺されたユンテン。ICTが入手したもの。彼の葬儀がダンゴ僧院で今日行われるという。

中国当局の情報網切断、交通切断のためダンゴやセルタからの新しい情報は思うように入って来ない。それでも、現地と連絡を取る事ができたインドその他に在住の同郷人を通じ各メディアに少しは報告が入っている。ただ、情報は一定していないのが現状。例えば、その死者数においても、ダンゴにおいては1人から6人。セルタにおいても2人から5人と様々な報告がある。ダンゴ、セルタともに銃弾を浴びた人は多数いるらしく、今もその人たちに十分な治療を受けさせることができず、多くの被弾者が危険な状態であることは確かだ。

以下、今各メディアに伝えられる、ダンゴ、セルタ、ンガバの状況をまとめてみる。
写真は昨夕ダラムサラで行われた同胞への連帯と犠牲者追悼のために行われたキャンドル・ライト・ビジルより。主催はTYC。今朝にはチベット亡命政府と議会が合同主催し、ツクラカンで同様の趣旨の祈祷会も行われた。

_DSC3342<セルタ>
セルタでは中国の旧正月である23日を前に街には「チベットの自由」と「法王の帰還」を訴え、同時に「焼身抗議を予告」し「遺体が中国側に奪われないよう訴える」チラシが多数撒かれたという。これに反応し、22日と23日に小規模の抗議デモが行われた。しかし、この時には当局はこれを鎮圧することはなかった。

24日、午前10時過ぎに始まった抗議デモには、前2日に増す数百人が参加した。12時頃まで行われ、デモに参加する人は数千人に膨れ上がったという。これを鎮圧するために、500人以上の保安部隊が投入された。デモ参加者を逮捕しようと暴力を振るう武装警官、軍人と空手のチベット人たちの間に衝突が起こった。そして部隊はデモの群衆に向かって無差別発砲を行った。

_DSC3273ある情報によれば発砲は2度に分け行われ、最初の発砲で2人が次の発砲で3人が被弾死亡したという。亡命政府も5人が死亡と発表している。この内現在名前が判明しているのは2人。セルワ(གསེར་བ་)村出身のダワ・ダクパ(ཟླ་བ་གྲགས་པ་33)とオンサ地区近辺の遊牧地から来たポポ(འོན་ཟ་བདེ་བའི་འབྲོག་ས་ནས་ཡིན་པའི་པོ་པོ་)と呼ばれる35歳男性だけである。銃弾を受けたものは数十人に上り、逮捕者は40人程という。

被弾し、銃弾がまだ体内に残っている人も病院で治療を受ける事ができず、危険な状態であるという。ある情報によれば、病院が被弾者の治療を拒否しているという。

_DSC3519この事件の後、街は戒厳令下状態となり、全ての商店は店を閉めさせられ、通りに出る者は全て撃ち殺すと脅されている。

この部分参照:24日付けTibet Express チベット語版http://p.tl/063V
24日付RFAチベット語版http://p.tl/DH8m
24日付RFA英語版http://p.tl/8Vav
25日付けTibet Timesチベット語版http://p.tl/N0CK
その他、VOTチベット語放送。RFAチベット語放送。

_DSC3303<ダンゴ>
ダンゴでも「焼身抗議を予告」するチラシが撒かれた。このチラシを撒いたのではないかと疑われた人々が大勢拘束された。このことがデモのきっかけとなったと思われる。最初数百人だったデモ参加者に当局が発砲し、死者がでたことにより、デモは急速に膨れ上がり、最終的には5000人以上が参加したと思われる。

デモ参加者に向けて保安部隊が無差別発砲したことにより、2人~6人が死亡したと伝えられる。この内名前等が判明しているは2人だけでノルワ村のユンテン(49)とロキャの息子とだけ判明しているもう1人である。

_DSC3411ノルワの遺体はダンゴ僧院に運び込まれ、今日その葬儀が行われる。ロキャの息子の遺体は他の僧院に運び込まれたという。その他、負傷者のほとんどはダンゴ僧院に運び込まれており、その内36人の名前は亡命政府等から発表されている。この内、銃弾が体内から抜けない等で重体なのが3人とも12人とも言われる。中には頭に銃弾が入ったままという人もいるとの報告もある。ダンゴ僧院には一応病院があるということで負傷者が運び込まれていると思われるが、その病院の医者も被弾し重体ということであり、ちゃんとした緊急治療が行われているとは到底考えられない。

この部分参照:
23日付RFA英語版http://p.tl/heKt
24日付Tibet Net チベット語版http://tibet.net/tibetan/2012/01/24/བྲག་འགོའི་ཞི་རྒོལ་སྐབས/
等。

_DSC3428<ンガバ>
23日にナムツォ僧院とメウルメ郷のチベット人、100人程が真言を唱えながら通りを行進していたとき、保安部隊がこれを遮った。真言は突然「チベットに自由を!ダライ・ラマ法王に長寿を!」の叫びとなり、衝突が起こった。多くのチベット人が拘束された。また、この後メウルメ郷には大量の部隊が送り込まれ、100人程の住民が行方不明となったという。

キルティ僧院で2週間行われる法要に参加するために向かっていた大勢のチベット人も途中で遮られ、暴行を受け、大勢が拘束された。23日には2度に渡りキルティ僧院を右遶する灯明行進が行われたともいう。

_DSC3575その他、ダラムサラ・キルティ僧院の報告によれば、去年逮捕され刑期3年を受け西宁のメンヤン刑務所に服役していたキルティ僧院僧侶ロブサン・ケドゥップが22日、健康を理由に解放された。彼は刑務所で受けた拷問により、下半身が麻痺し、ほとんど言葉を発する事もできない程に衰弱しきっていたという。

この部分参照:情報源はすべてダラムサラ・キルティ僧院に入った現地報告である。報告は非常に詳しいが、これを要約紹介した。
これを転載したものとして例えば、24日付Tibet Times チベット語版http://p.tl/DIhD

_DSC3596

_DSC3591

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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