チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年1月11日

ラブランで公安に撃たれチベット人男性死亡、大勢が派出所へ抗議

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8日の夜、アムド、ラプラン県アチョックで空港建設現場からテントを盗んだという嫌疑を受けた1人のチベット人が公安に撃たれ死亡した。これを伝える記事は今の所、何れも10日付けRFA英語版http://p.tl/Y878、中国語版http://p.tl/O6hw、Tibet Timesチベット語版 http://p.tl/cp7oであるが、@uralungtaさんがすでにRFA中国語版を翻訳して下さったhttp://bit.ly。以下、若干のチベット語表記を補足し、これを転載させて頂く。

空港建設予定地は地図http://g.co/maps/2jeyj AとBの間。

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jpg-large<サンチュ空港滑走路が聖地に近すぎる ケンロでチベット人が当局と衝突>
RFA中文 2012-01-10

 中国甘粛省南部のチベットエリアである夏河県(ラブラン)で今週、チベット人と公安の衝突事件が発生した。現地の公安が2人のチベット人を逮捕しようとした際、そのうち1人が撃ち殺された。FRAチベット語放送局の得た情報によると、警察当局はこの2人のチベット人に対し、現地の空港滑走路建設現場でテント2張がなくなったことに関連する疑いがあるとみていたという。死傷者が出たことをきっかけに、チベット人が派出所に詰め寄り、公安部隊は催涙弾を使用して詰めかけた群衆を鎮圧、多数の逮捕者と負傷者が出た。

 ケンロ、ラブランのサンチュ(中国地名:甘南州夏河མདོ་སྨད་བླ་བྲང་ཨ་མཆོག་འཚོ་བའི་ནན་པན་སྡེ་བ་[ラプラン、アチョック地区のチョウェーネンペン村])で日曜日(1月8日)、チベット人2人が逮捕されたことをきっかけとする「群体事件」(大勢の人が立ち上がる民衆抗議)が発生し、公安部隊が催涙弾を使用して抗議活動を制圧した。RFAチベット語放送局に現地ラブラン村のチベット人から寄せられた情報によると、日曜日(8日)夜、中国の公安(日本でいう警察)と安全部門(日本でいう公安)の一隊が、ラブラン寺院付近の集落にやってきて、ゴンポ・キャップ(མགོན་པོ་སྐྱབས་)とゴンポ宅に招かれ滞在していたチベット人グルゴン・ツェリン(གུར་མགོན་ཚེ་རིང་)を逮捕しようとした際、35歳のツェリンが(窓越しに)撃たれ(死亡した)、現地チベット人の激しい怒りを招いた。

 情報によると、事件の背景には当局が夏河県(サンチュ)に計画する臨時空港滑走路がある。滑走路のコースがチベット人が聖山として信仰するミニヤゴンゴ山に近すぎるとして、チベット人から反対と阻止活動が起きていた。そこに最近、建設工事現場でテント2張りがなくなり、警察当局は上記チベット人2人の仕業と疑いをかけたのだという。現地チベット人の解説では、彼ら2人はテント紛失事件とは無関係であることを証明できるアリバイがあったという。しかし警察はそれを信じず、なおも2人を連行しようとして、さらには1人が死亡するに至った。

 今週月曜(9日)、憤ったチベット人は現地の派出所に押し入り、戸口や窓ガラスを破壊し、警察官は派出所を逃げ出してサンチュ中心部まで逃れた。その後、特殊部隊と特殊警察車両22台が出動、催涙弾を使用し、3時間かけて鎮圧した。その際、警察車両も焼き打ちされ、警察は多数のチベット人を拘束し、また多くの負傷者が出た。

 記者は火曜(10日)、サンチュ在住でかつて取材したことのある知人に電話取材した。しかし今回は記者が質問したとたん、「私に聞くな」と言って素早く電話は切れた。
記者「ちょっと聞きたいのだが、警察車両は焼かれたのか? 催涙弾が撃ちこまれた?」
回答「知らない。聞かないで」

(以下、県政府事務室への電話取材のやりとり部分省略。「住民抗議など知らない」という内容)

 また事実関係として、現地での航空建設計画は確実なものである。「蘭州日報」の12月11日報道によれば、夏河空港は国家と西北地区及び甘粛省の「民間航空“十一五”発展計画」(2010年から2015年までの開発計画)の重要プロジェクトの一つである。夏河空港の滑走路は長さ3000メートル、幅45メートル。11月末までに、滑走路の基礎土木工事で掘り返された土壌は84万1784.8立方メートルに至り、掘削必要量の86・3%まで終了しており、地盤の基礎処理は57・3%が完成している。

(以下、夏河県宗教局への電話取材のやりとり割愛。「住民抗議は知らない、聞いたことがない、滑走路の建設計画も知らない」という内容)

 元日(1月1日)から、チベットエリアでは既に3人が抗議の焼身をはかっており、チベット本土で頻発する抗議の焼身でチベットの状況はふたたび緊張しつつある。インドのチベット亡命政府が刊行する「チベット通信」編集者のサンゲ・キャプは一貫して状況を憂慮してきた。サンゲ・キャプは「我々はさらに多くの抗議活動が続くことを非常に憂慮している。中国政府に対し、チベット人の訴えに耳を傾け、緊迫した情勢を緩和するよう、中国政府に強く呼び掛けたい」と話した。

(RFA:自由アジア放送特約記者喬竜)

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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